BCL レポート    平壌放送
(1973 − 1976)


 同じ頃、平壌放送も聞いていました(ただし出力が弱く、良好に受信できないことが多かった)。当時から平壌放送は浮世ばなれしたところがありました。

 同じ社会主義国でも中国とは雰囲気がまったく異なり、元気のよい革命歌曲が多い中国に対して、平壌放送はゆったりした女性の斉唱、重唱がまるでヒーリングミュージックのように流れていました。
 アナウンサーの声の調子も説教師のようにおだやかで、当時1200MHzあたりで流れていたキリスト教の布教放送と雰囲気が似ていました(今でもあの放送はあるのだろうか)。
 ただし、国内向けや海外同胞向けの放送は、日本の戦時中のような深刻な絶叫調アナウンスが多かったようです。

 文化大革命時代の中国が、みなが農業や工業労働に従事することを奨励し、人民全員がそれぞれ鉄を生産しよう、と各自の庭に鉄鉱炉を自作してしまうような(使いものにならなかったようですが)、超体験主義というかウルトラリアリズム的なところがあったのに対して(過剰に現実に対して”運動”していた)、平壌のほうは年中パレードやマスゲームを行っている一方、何か繭の中にこもったような、現実から眼をそらして美しい夢の中にまどろんでいるような感じがありました。

 何年か前に、東欧の監督による「金日成のパレード」という映画を見ましたが(延々北朝鮮で行われたパレードの映像を流しつづけるドキュメンタリー作品)、このとき、放送で感じたこの印象はまちがっていなかったと思いました。
 具体的な数字は忘れましたが、とにかく1年365日のうちかなりの日数がパレードに費やされているという注書きで、パレードに費やされる膨大なエネルギーと、現実社会での脱力したような感覚の落差に、これはこれで極端な世界だと感じました。

 おそらく、為政者は悪意なく、”美しい国”、”この世の楽園”を本当に作りたかったのだと思います。ここに理想に導かれた古今東西のさまざまな組織、国、団体が必ず遭遇する隘路があります。現実から遊離しはじめ、悲惨な現実を認めようとせず夢に逃げ込む危険な分かれ道が、きっとどこかにあった筈です。



・平壌放送の放送サンプル


  • 音源は中波ラジオです。

  • 録音内容はおもに国際放送である平壌放送、一部海外同胞向け放送です。

  • 平壌放送にも「この歌を習いましょう」という北朝鮮の音楽を紹介する番組があったのですが、日本語放送の出力が弱く良好に聴取できないことが多かったことと、美しいがどこかエネルギーに欠ける曲にあまり興味を持てなかったことから、歌詞録音をしておらず、題名もさだかでないものが多いです。

  • (2002年10月追記)最近、雑誌等にいろいろ書いてありますが、当時、平壌放送を聴いただけで拉致されそうになる、などということはなかったです。ただ、手紙を出すと住所がわれるため、どうだったかはわかりません。しかし、BCL雑誌でもあまり平壌放送はとりあげられていなかったと思うし、人気局だったとは言いがたい。ラジオ韓国KBSのほうがよほど人気局で、お便りの時間も盛況でした。ちなみに当時のKBSには「北韓の実情」というおどろおどろしい音楽で始まる番組がありましたが、現在のKBS日本語放送では、”経済発展に向けて努力する北韓の姿”をときどき伝えています。変われば変わるもんだ・・・


★ ちなみに下記サイトから、北朝鮮に関するさまざまな旅行記を閲覧することができます。どなたの旅行記だったか、「なぜか新幹線」というキャッチで、故”首領さま”が新幹線の模型とともに子供たちとにこやかに笑っている”プロレタリアート絵画”が掲載されていたり、なかなか楽しめるものが多い(ちなみにそのココロは、新幹線開発技術者のメンバーに在日の人がいた、ということでしょうね)。

旅人文庫現在WEB上で閲覧可能な旅行記の集大成的なサイト。解説もわかりやすく、よくこれだけの旅行記に目を通したものと感心。


★ ログでリンクをチェックしていたところ、北朝鮮関連のリンクサイトの存在を知りました。かなりUGのようですが、興味のある方はdprkドット1accesshostドットコムです(英語のサイトです(おそらくイギリスで作成)。リンクは音楽ものがメインで、サイトの言語は英語、朝鮮語、韓国のKBS、日本語、中国語とさまざま。"そうれん"関連の映像会社のサイトへのリンクもあり(例の中央テレビを動画で配信)、そこのリンクも充実しているのでさらに"そうれん"のサイトにも飛べます)。(2003.6.16付記)


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