ミ ズ イ モ | |
母島で偶然、ある島民からミズイモがある、と聞いた。昔は母親が畑で作っていたが今はあまり見かけない、最近ある人からミズイモの味噌汁をいただいた、ミズイモはおいしいよ、という。 だめもとであたってみたところ、茨城の約1反の畑で8年雑穀を作っているという話が功を奏したのか、ミズイモが自生しているところを案内するよ、というおじいさんが現れた。彼も戦前からの古い島民で、よそから持ってきたのかもともと自生していたのかわからないが、ミズイモは子供の頃からあった、昔はさかんに作っていたという。今は山の中で作っている。というか山の中でしか作れない。その理由はというと: ミズイモは水のよいところにでき、母島で聞いた栽培地、自生地もそうしたところだった(いちおう、地名は伏せておく)。父島では、訪問した先の畑をやっている人は土地の水周りのよい一角に必ず植えており、すぐに見せてくれた。ただ、やはり農協に出すほどの量はなく、自家用と周囲で消費している感じだった。(下の写真は乾いた土地に見えるが、いずれもグジュグジュしたところで、ミズイモはそうした土地の水を吸うからいい、という人もいた) ところで、ミズイモはおいしいのか? 母島の人の話では、昔はすりこんでねっとりとさせ(ハワイのポイに似ている)、それを味噌汁に入れたりして食べていたそうで、今は普通に切って味噌汁にする。茎(ズイキ)も皮をむいて食べられる、味噌汁に一緒に入れる。 | |
ところでミズイモには2種類ある。このため、自生しているものを探すときは注意が必要。母島の自生地のすぐ近くにも外見はほぼそっくりのミズイモが自生しているが、これは食用のミズイモとは別物。うっかり食べると一週間くらい口の中がえぐくなる。父島でも同様。 ミズイモはワサビ田のように、水の流れる水田で育つ。溜め水だとおいしくならない、という。ミズイモには小芋はできない。根の地下茎で増えてゆく。大きくなると腰丈ほどになる。 ちなみに、小笠原では里芋は11月に植えて6,7月に収穫だと言っていた。年内に地上10センチくらいにするという。関東では3月か4月に植えて10月か11月に掘り出すので、逆転している。 ところで、ミズイモはサトイモの系統で、タロイモに近い。日本に稲作が伝わる以前、雑穀と根菜類を主食とした古い文化があったという研究が進んでいる。里芋などサトイモ科やヤマノイモ科に関する儀礼(十五夜に里芋を備えたり、芋で正月を祝う)は、こうした古い文化の名残だという。里芋について詳しくはこちら。 |