作  物

 一般に小笠原の農業は送料も肥料もコストがかかるので、内地向けは厳しい。ただ、戦前は内地の西洋野菜はすべて小笠原産でまかなっていたという。沖縄と競ったことがあり、こちらのほうが平均気温が2度高く、品質でまさり競争に勝ったのだそうだ。

 小笠原の最低気温は6度、それ以下に下がったことはないという。トマトは露地ものでも冬に出荷が可能。

 また、小笠原の農業は台風の害がすごい、とも聞いた。畑が山上や山腹にあるところはまだしも、谷あいの場合、風が跳ね返って風速5,60メートルにもなり、ハウスがひっくりかえって横倒しになったりする。全滅することもあるという。畑に沢がある場合は、鉄砲水も出る。

nougyou nougyou
マンゴー(父島)
マンゴーの若い実(父島)

 ハウスにするのは、基本的に風除けと鳥除けだが、マンゴーの場合は雨除けもある。雨があたると受粉しない。雨が少ない年は、野生のマンゴーの実がつくが、多いとつかない。
 マンゴーはあまりお金にならないと聞いた。ただ木は十数年もつ。

nougyou nougyou
グアバ(母島)
パッション(母島)

 パッションには3品種あると聞いた。現在は紫のものが一般的だが、古い島民いわく、古い品種のパッションは実は小さいが味が濃くておいしい、という。
 パッションは1年ごとに植え換えたほうがおいしくできる。ぶどうのように、1本の木でかなりの広さを棚にする。パッションは2,3年使える、というある農家の人は、幹の下のほうをウサギが齧ったらかえってよくなった、ぶどうも皮をむく、ていうでしょ、あれと同じようだ、と言っていた。

nougyou nougyou
ストロベリーグアバ(母島)
作物名不明(母島)

 ストロベリーグアバ(バンザクロ)は父島母島のあちこちに自生している。実は食べられる(グアバと同じ味)。このほか、釈迦頭(悪くなりやすいので輸送販売には向かない)、ピタンガも自生しており食用になる。

nougyou nougyou
インゲンとサラダえんどう(父島)
島トマト(父島)

 この広さの畑で島民1500人分のインゲンとエンドウをまかなう。
 基本的に母島の農業は内地向けで、父島は島内消費用だが、島トマトは東京に出荷されている。父島のある農園では無農薬、露地でトマトを栽培していた。じゃがいもは11月に植えて4月頃出荷。
 島の人は緑のトマトを買う、と聞いた。酸味を好むためで、緑でも熟していれば甘味は赤いものと同じ、赤くなると酸味がぬけてしまう。一方、古い島民でも赤いほうがいい、という人もいた。

 農家の人から、小笠原のサツマイモを内地に持ち出すな、というが、逆に内地から持ち込んでほしくないと思う、最近ウイルスとか多いでしょ、と聞いた。確かに、鯉淵学園の就農コースに通っていたとき、世界各地で発生した農産物のウイルスの伝播が早い、数年後にはすぐ日本に入っている、と聞いていたので、さもありなん、と思う。

nougyou nougyou


 左上は春うこん

 右上は世界一辛いという東南アジア原産のものよりもさらに辛い、硫黄島原産の唐辛子(まだ芽が出ていない)。あんな小さな島にも”原産”となる植物があるのか、と少々不思議な気がした。

 右は三尺バナナ(いずれも父島)

 バナナは風に弱く、台風がくるとぼろぼろになる。バナナは生長に2年かかるので、その間のケアが大変だそうだ。

nougyou


←母島2      ミズイモ→        目次        就農記