里    芋

活東庵公開日:2006.4.10

 7,8年畑を続けていて、気づいたのだが、粟、黍、稗、高黍(モロコシ)などの雑穀や、地元のタネの作物(現在のところでは黒豆)、里芋などは作り方が非常に簡単で、除草やまびきなど最低限の手さえかければ、素人でも毎年はずれなく収穫することができる。野菜はそうはいかない。手間と技術がいる。また、今の場所ではなぜかソバも難しい。地元の人はここらでは昔からソバはいまいちだ、と言う。

 そんな手間いらずの作物の一つ、里芋は、畑を借りたとき、貸してくれた老夫婦が「里芋も植えるといいから」と種芋をたくさんくれた。理由は「皆植えているから」。で、私も植えることにした。その後も毎年惰性で植えている。
 確かに、近所を歩き回ってみると、みな必ず畑の一角に里芋を植えている。東海道五十三次を歩き通す催しに参加したときも、神奈川、静岡、愛知、和歌山、滋賀、京都と歩いたが、畑を見ていると、どこでもみな、おまじないのように必ず一列里芋を植えているのを見ることができた。一列か二列なので、売り物ではなく自家用だろう。茎は緑のや、赤いズイキとして食べられるのや、幾品種かある。また、西のものは関東のものに比べ背丈や葉も小ぶりのように見えた。

 この「おまじないのように必ず植わっている里芋」になんとなく興味と愛着が湧いた。ほうっておいても勝手に太って小芋をつけてくれるので、他の作物で失敗した年には、ちょうどよい救荒作物になったのではないかと思う(それは雑穀も同じで、祖父の実家のある山形上山では、平地に田圃を作っても必ず山でも雑穀を作っていたという)。

 今回ハワイに旅行に行った際、かつてハワイの主食はタロイモだったとのことで、タロイモの水田を見たり、つぶしてペースト状にした食べ物、ポイを食べる機会があった(写真

 よく東南アジアや南アジア、太平洋の民俗を語るときに、タロイモ、ヤムイモが出てくる。これらのイモは日本にはない、まったく未知のイモ類、とずっと思っていたが、最近、実はタロイモはサトイモの一種であることを知った。ヤムイモの系統も日本にあり、山芋やナガイモがそれである。

 サトイモには染色体数が二倍体で熱帯性のもの(タロイモ、ミカシキ、ヤツガシラ、ミズイモ、沖縄のタイモなど。水田で栽培されることが多い。インド、東南アジアに多い)と、三倍体で陸生の低温に強い温帯系のもの(いわゆる里芋、日本、中国に多い)とがある。

 ヤムイモと同じ系統のヤマノイモ科にも、サトイモ科同様、二倍体で熱帯系のもの(ヤムイモ、ダイジョ、カシュウイモ、ヘビイモなど。インド、東南アジアに多い)と、三倍体で温帯系のもの(山芋、ナガイモ、ヤマノイモ、ツクネイモ、トコロなど。日本、中国に多い)とがある。

 もちろん、熱帯系の二倍体のサトイモやヤマノイモも、日本にある(タイモや小笠原のミズイモ、カシュウイモなど)。茨城でも今年はヤツガシラを植えてみるか、とか言っている。

 日本に稲作が伝わる前は、雑穀と根菜類を主食とした古い文化があったという研究進んでいる。餅なし正月(イモ正月)もしくはサトイモ優先の正月のある地域は、こうした古い文化を残しているという。
 さらに、里芋よりもヤマノイモ科の芋のほうが文化として古い可能性があり、正月やハレの日に山芋やナガイモ、トコロを食べる習慣のある地域は、こうした古い縄文時代に遡る文化を残しているとする。
(参考文献:『稲作以前』『南からの日本文化』佐々木高明、いずれもNHKブックス、『イモと日本人』坪井洋文、未来社、『栃と餅』野本寛一、岩波書店)。

 最近の民俗学は、農業や植物学の観点からも研究が進んでおり、今後もさらに新しいことがわかってくるだろう。
 ここ十年ほど雑穀を育てているが、こうした古いイモ類も集めて、栽培してみようかと考えている。かつてはトコロやカシュウイモを食べていたが、今ではもう食べない、という話も本に聞き取られているからだ。ただ、土地や気候があうかどうかが問題ではある。



里芋と山芋

活東庵公開日:2006.12.10

 某フォーラムで強湿田で何が作れるかについて問いかけがなされ、芋談義になった。以前、ここでも書いたが、日本に稲作が伝わる前は、雑穀と根菜類を主食とした古い文化があったという研究進んでいる。

 ある人が、お婆さんが年越しか正月2日にナガイモをすりおろした「トロロ」を食べることにこだわっていた、と教えてくれた。昭和村の知人も、2日にトロロを食べたという。おそらく、完全な芋正月(餅なし正月)の家庭は少ないかもしれないが、両方食べる、という家は結構ある。雑煮にサトイモを入れることも多い。京都の知人は、正月用にエビイモという特殊なサトイモがある、と言っていた。ただ、ナガイモにこだわるところは少ないと思うため、消えてしまわないうちに、こうしたことも聞き取り、記録に残したほうがよいように思う。

 また、ある土地では、土着のヤマノイモ(同じ呼び名で違う種類の芋がいくつかあるらしい)でじゃがいも風の形状のものが名物となっており、とろろにするとものすごい粘りがある、一個千円、二千円という高価な芋で、土壌水分に敏感で作りにくい芋と書きこみがあり、別のところのヤマイモも、擦りおろすとトリモチと思うほどの粘りで、噛み切る感じで食べると教えてくれた。
 『栃と餅』に出てくるトコロも独特の味だとあり、こうした古い品種の土着の芋に今、とても興味がある。

 もともと雑穀を育てているのも似たような動機だが、こうした古いイモ類も栽培してみたい気がする。雑穀を作っていると、年寄りから昔作っていただの話かけられることも多く、いろいろな意味でよいきっかけになる。近所の農家から種をくれ、と言われることもある。地元の種がもうないこともあるようだ。

茨城県鯉淵学園(友部)の里芋
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6月21日 7月5日
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7月12日 8月1日
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9月19日
茨城県内部の里芋
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6月20日 6月30日
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9月1日 9月15日
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10月19日 11月4日
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11月30日

 現在植えているこの里芋はお盆の後急激に成長し、11月霜にあたるとしおれる。この頃掘り起こして、土中に埋めて(上にビニールでマルチ)保存。



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