へんろ宿には、新しい宿、昭和初期に建てられた古い宿、バスで回る参拝客を受け入れる大型民宿など、いろいろあった。新しい宿は快適だが、古い宿には古い宿のよさがある。古いほうがご主人が話し好きなことも多い。 お寺の宿坊にも泊まれる。朝のお勤めのあるところとないところとあり、個人客数名しかいなくても受け入れ可能なところと、団体客がある場合のみ宿泊を受け入れるところとあった。山上の宿坊は冬は氷点下になることも多く、水に困るので冬はやっていないことが多い。 戦前に建てられた宿は、凝った木造家屋で中庭を備え、庭に面した廊下づたいに部屋に入る作りだった。入り口に屏風やつい立てが立てられていたりする。お客を迎え入れるときと見送るとき、主人が玄関の上がり口に正座をしてお辞儀をすることも多い。外見は古びていても、中に入ると昭和40年代頃までなら十分高級だったろうという宿もあり、高名な古い俳優や政治家の色紙がかかっていたりする。古い宿は主人夫婦が高齢であることも多く、この世代の人たちがいなくなったら、古風な礼儀とともに、古いタイプのへんろ宿もなくなってゆくのかもしれない。 建物には凝っていなくても現在三代目四代目で、ずっとおへんろの世話をしてきた宿も、いかにもへんろ宿の雰囲気を残している。お杖洗いを指示されたり、おかみさん自ら洗ってくれることもある。朝出発するとき「ご無事で」と合掌することもあった。 地域では、高知の宿が、宿のおじさんおばさん(特におばさん)に強烈なキャラクターの人が多く、いつ終わるんだろうというくらい話好きだったり、過干渉なくらい世話好きでウェットな感じの人が多く印象に残った。 予約 宿代 当たり外れ |