新規就農者訪問:与論島編

 2001年夏、新規就農した知人を与論島に訪問しました。
与論島のようすについては、こちらを参照してください。

 大学で法律を学んだ知人は、以前から就農を希望していた。2000年冬、ついに就農して与論島にいる、おそらく永住するつもりだと連絡が来た。
 さっそく2001年夏に、九州の就農者、農業者を訪問して回ったついでに、与論島にも寄った。彼は、与論島に来るまで、高知と与那国でそれぞれ1カ月づつ研修したことがある。与論は『田舎暮らしの本』で知り、3年ほど前(2001年の時点)に見学で来て、1カ月ほど研修した。与論に決めたのは、ここが一番歓迎してくれる感じだったため、という。「研修先が南ばかりだね」というと、雪のあるところは好きでないそうだ。
 研修終了後、受け入れ農家から、すぐに雇うことはできないが、将来はその体制にしたいので、雇える体制になったら来てくれ、とのことだったので、フロムAで見つけたバイトで与那国の畜産農家で半年働いた。与論の研修先は果樹園だったが、与論でも畜産はやっているし、いずれ複合経営にしたいのでやって損はないと思い、バイトで入ったという。


mango

 その後、この果樹園へ来た。農園の給料だけでは無理なので、農園のオーナーが経営する別会社でも働いており、おもにその給料で生活している。決して高い給料ではないが、島ではその程度が普通で、贅沢しなければやってゆける。
 家賃も安いが、普通は地元にコネがないとなかなか借りられない。それで与論の海が好きで外からやってくるホテル勤めの人たちは、みな民宿に住んでいる。彼自身はオーナーの関係で家を借りることができた。
 東京や都会が恋しい、ということはない、と言っていた。東京育ちだが、元から好きでなかったそうだ。

 農園を見学させてもらう。大型ハウスが何棟かあり、マンゴーが植わっている。マンゴーはデリケートで風に弱く、雨にもあまりあたらないほうがよいのでハウス栽培になる。訪問した9月末の時点では、収穫は終了していた。マンゴーは1個1000円くらいで高く売れるので、もっとうまく作りたいが、なかなか難しい。品種もいろいろあり、ここでは黄色いものと緑のまま熟する大きいものとを栽培している。ハウスは地域柄、風に強い頑丈なもの。しかしこれでも不安で、台風が来るとビニールはすべてはずす。夏は中が40度以上になり、暑くて作業は大変だ。(右はマンゴーの木)


guava

 その他、路地でグァバ(これは奄美諸島で自生しており、よく見かける。ちょうど収穫期)、パパイヤ(実がつきはじめたところで、これから収穫期)、アテモヤ(甘くておいしいので増やしたい)、ドラゴンフルーツ(簡単に育つ。白と真紅の二種類を栽培しており、ちょうど収穫期。黄色い種類もある)、地元の島バナナ(モンキーバナナに似ており、酸味があっておいしい。9〜11月が収穫期)、そのほかハウスでスターフルーツ(風に弱く虫にかじられやすいので袋がけする。これから収穫期、黄色と緑と二種類を栽培)を栽培している。このほかパッションフルーツもやってみたいが、結実に1日の日照時間が11時間必要で、与論島はその条件はクリアしているものの、暑すぎて、温度が25度以上あるといけない、という条件に引っかかる。通常は春秋に収穫するようだが、冬収穫できるものがほしい(パッションフルーツは小笠原で若い新規就農者がよく作っている)。

(写真は奄美諸島によく自生しているグアバ)
shimabanana

 与論での問題点は、船の抜航(欠航にはならないが、与論など小さい島には寄らず抜かされること。船長判断で、港に着く直前に判断されるため、乗客も荷物も港で待機している)がよくあること。特に台風シーズンはしょっちゅう。このため、収穫が難しい。最初から欠航が決まっているときはあきらめられるが、微妙なときが判断に迷う。
 果物はなぜか奄美よりも沖縄のほうが高く売れる。(バナナの話だったと思うが*筆者注)沖縄でキロ700円が奄美では3〜500円でしかしない。東京にもたまに出荷する。

(写真は島バナナ)


papaya

 肥料は鶏糞で、宮崎の業者から1コンテナ200袋、これを年4回買ってくる。マンゴー1本で1袋使う。大型ハウスに80本、2株のため、それだけで160袋使う。バナナにもかなり使う。バナナは1年草で、実を取ったら切り倒すが、タケノコのように次々株から出てくるので、翌年はそれを使用する。沖縄あたりの島バナナ農家は2年ごとくらいで株を更新しているが、うちでは代々使えないか、株から切り取って別に植えてみて実験している。

(右の写真はパパイヤ)


 苗はドラゴンフルーツもアテモヤも台湾から購入している。台湾は南国フルーツの先進地域で、業者がバナナを持ってここまで来ることもあるし、注文して取り寄せることもできる。農業試験場の人はあまり頼りにならず、何かの専門家なのだろうが、2〜3年いるだけなので地域の気候にあったものにあまり詳しくない。結局、沖縄の先進農家を見たり、自分たちでやるのが一番だと思う。
 まだ農場だけでは食べてゆける状態でないが、軌道にのせたいし、可能なら熱帯農業の研修場として、アジアなどの研修生も受け入れられるようになると面白いと思う、と夢を語っていた。

starfruit dragon
スターフルーツ



ドラゴンフルーツ




『鯉淵クラブ8号』掲載


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