林業/里山 (2009年〜)東京西部
[服装/持ち物] [里山:里山について] [里山:竹切り] [里山:除伐]
[杉桧林:枝打ち] [杉桧林:間伐] [杉桧林:下草刈り] [杉桧林:伐採]
[杉桧林:山村のようす] [杉桧林:山林の現状] [杉桧林:動物] [杉桧林:その他雑記]
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東京都西部の複数箇所で聞いた話をまとめました。
まだまだ初心者のため、思い違い、メモ間違いもあると思います。新しいことがわかり次第、更新してゆきます。 (初出:2010.1.28 改訂:2011.2.16)服装/持ち物
揃えると良いもの:
ヘルメット:最近はつば付きもある。蒸れないよう穴のあいたものも
軍手:鉈や鋸を使うため、ゴム製の作業用がよい。さらに皮手袋のほうが丈夫
作業用ズボン:ポケットが多いと便利。上着も作業用はポケットが多い
蜂の季節は黒い服装は避ける
服装は、ボタン式などの場合きちんと留めること
ビラビラしていると事故の元
靴:長靴、足袋。鋲付きが良い。ゴムの鋲と鉄線の入った鋲とがある
急斜面では鉄線のほうが歩きやすいが、石の上や濡れているとすべる
ゴム付き長靴は釣り道具屋にある。鉄鋲付きは山林に近いホームセンターか森林組合
靴下:足袋の場合は親指付き
鉈:枝打ち用:両刃 間伐材の枝払い用:片刃
片刃:切れやすいので素人が使いやすい(枝打ちに使うとはさまりやすい)
片方向からしか使えない(逆刃はだめ)。枝処理によい。刃が欠けやすい
両刃:慣れないと切れ味はよくない。両方から使えるのと丈夫なので結局使いやすいという人は多い
枝打ち用の鉈は、刃がまっすぐでなく、多少カーブしている
鉈は人に貸すと研ぎ癖がつくため、人に貸したがらない
鋸:目の細かいもの:竹用 アサリがあり目が大きく刃も長いもの:間伐用
アサリのないもの:枝打ち用
目たては難しいため、初心者は刃が取替え可能なほうがよい
ベルト:鉈や鋸を吊るす
脚半:スボン裾がビラビラしないようまとめる。
ワイヤーの入ったものはチェーンソーに強い(ワイヤー入りは森林組合でないと手に入らない)
手甲:袖口をまとめる、もしくは手首保護
あると便利なもの:
ゴーグル:チェーンソーを使う場合。チップが飛ぶので目の保護
頭に被るネット:蜂の出る季節
ポイズンリムーバー:蜂の出る季節
縄:何かと便利。丸太運びや伐採時のコントロールなど
直径9〜10mm程度(それ以下は細すぎ、12mmだと多少太め)
長さ15m程度(20mだと長め)
薄黄色の素材のものを使うことが多い。黒黄色はナイロン製のためすぐ伸びてしまう
安全荷重は1/7なので700kg表示なら100kg
間伐ではトンは必要ない(人間にそんな力はない)
砥石:作業効率が変わる。プロは1日に何度も研ぐ
自然石−水を吹きかけるだけでよい(このため熟練者は自然石を持って山に入る人が多い)
人工砥石−水に十分にひたさないと使えない
灰色−中砥(通常使用、包丁など)
黒−粗砥(刃が欠けたとき)
レンガ色−仕上げ(1000番 ナタのさいご)
その他:
安全帯:枝打ちする場合。ワイヤー入りは強い(鉈でも切れない)
森林ボランティアではグループで用意し貸し出す形式が多い。自作する人もいる
ステップ:木に取り付ける。梯子からさらに登る場合に使うことが多い
長い梯子は重いので便利。値段が安い。ステップ4個でかなり登れる
昇降器:梯子を使わず枝打ちする場合。足に付ける
値段が高いので、森林ボランティアではグループで用意し貸し出す形式が多い
大鎌:大刈り用。これも通常は現場で借りる(長いので電車移動の人は持ち運びにくい)
バネ式剪定バサミ:笹刈りなど
(人が遊びに来る里山の場合、滑り落ちたときに刺さらぬよう
鎌で斜め切りにせず剪定バサミで直角に切る配慮をすることがある)
通常のはさみは摺り合わせ式−右手用は右手でしか使えず、砥ぎがむずかしい
バネ式剪定バサミ−左右どちらでも使える。素人でも砥げる
斧:扱いが難しい
チェーンソー:値段が高いので、グループで用意しているが、自分で持つ人も
東京都では安全講習会を受けて資格証を持つ人のみが使用する建前になっている
刈払機:グループで用意している
東京都では安全講習会を受けて資格証を持つ人のみが使用する建前になっている
その他滑車、クサビなども間伐、除伐で使用
基本的な研ぎ方:
角度を一定にする(手前と刃先で角度が変わると丸みを帯びてしまう)
必ず直角に砥ぐ
砥ぐ理由は「薄くする」+「ギザギザをつける」 横に動かして砥ぐとギザギザが消えてしまう
里山:里山について
里山での作業は、基本的に広葉樹が中心になる。一方、通常の森林ボランティアは、杉桧の人工林など針葉樹が中心。
里山はもともと、落葉樹の林だった。ナラ、クヌギ、カシ(常緑樹)などを15年ごとに切っては薪や炭にして使用していた。広葉樹は切ると再び株から出てくる。
里山に人が入らなくなってから、常緑樹が増えた。常緑樹の森は暗い。元の里山の景観に戻そう、ということで常緑樹を除伐している。里山には国蝶のオオムラサキなど昆虫が多い。常緑樹ばかりになると、冬に葉が落ちなくなり、昆虫が減る。虫は葉の下で越冬する。
(写真は除伐のとき見つかった鳥の巣)
里山:竹切り
竹は茶色く変色した古いものを切る。1〜2年の若い木は筍がよく出る。古い竹は筍が少なく養分ばかり吸う。古い竹を切ると、筍がよくとれる竹林になる。
竹はある程度古くなると自然に枯れる。竹も受け口追い口を作って切る(伐木方法の項参照)が、竹の場合は受け口を横一本でOK。その代わり、追い口は一気に切る。ゆっくり切ると竹は割れるので危険。
切る場所は節のすぐ上。節までが深いと雨水がたまる。
竹を地拵えの杭にするため、節の上のほうで切る場合は、節のすぐ上に切り口を入れて水の抜ける穴をあけておく。倒すときは、他の木にかからないか確認する。事故は他の木にかかったとき、それを正そうとしてよく起こる。
竹の場合は、引っかかったら根元を持って横や下に一気に引いて倒す。倒したら枝を払う。鉈の背や棒で上から下へ叩けば簡単に落ちる。その際、いったん枝の下側を叩いてから上から垂直に叩くと、幹まで裂けずにきれいにとれる(竹細工をする人は必ずこの方法で落とす)。
鋸で切る場合は、切り口を残さないこと。人がひっかかると危ない。竹は春や夏に切ると2年くらいしかもたないが、秋に切ると10年もつ。
春勢いよく伸びている竹の上部を切り落とすと、1,2週間後に上方の節間に水がたまる。昔、この水を飲んだり化粧水にした
真竹−節が二重。節間が長い→竹細工によい。丈夫→小屋作りに使える
孟宗竹−節が一重。節間短い。やわらかく、1年でだめになる
真竹の竹の子はおいしい
里山:除伐
広葉樹の除伐は秋から冬にかけて行う。この期間は水を吸い上げないため。夏は水を吸い上げているため、切っても乾燥しない。
伐採の方法は、下の伐木方法の項を参照。
杉や桧は倒しやすいが、広葉樹は難しい。
一つには、杉は柔らかいが、広葉樹(特にカシなど)は硬い木が多く切りにくい。
また、広葉樹は枝が広がっており、木の重心を見極めることが難しく、なかなか思った方向に倒れない。かかり木になることも多い。針葉樹はやわらかく、かかってもしなって倒れることが多いが、広葉樹は硬いため引っかかる。
ツルの絡みも確認。かかり木やツルが絡んでいる場合はロープをかけ、ゆすったり引っ張って倒す。
どうしても谷側に重心があることが多く、真下でなく斜めに倒すためにはロープでコントロールすることになる。針葉樹は垂直だが広葉樹は重心が寄っているため、追い口を切っている途中で倒れ始めることも多い。必ず別の人が樹上の揺れを確認し、揺れてきたら切るのを止めて離れること。気づかずにどのくらい切れたかのぞくと、倒れてきた木に顔をやられる。
山仕事での上下作業は厳禁。(杉桧林でも同様)
除伐したら、枝を払う。この作業は必ず倒した直後に行う。あとからバラそうにも、乾燥するとナタも入らなくなる。木は斜めの方向に弱いので、鉈の角度に気をつければ1回で落ちる。
そのまま地拵えして斜面の土留めにする場合も多い。
枝は枝で集めて積んだほうが腐りやすい。ぼさぼさのまま地拵えすると蜂が巣を作りやすい。広葉樹は、倒した木の枝を払う際、どの枝で支えているかよく見極めること。重力のかかっていない枝から落としてゆく。その後、上から玉切りすれば、一気に滑り落ちることはない。
枝を払う場合は必ず山側に立つ。谷側にいると、枝を落としたとたんに思いがけず木が滑り落ちて巻き込まれることがある。薪:
針葉樹の薪はすぐ燃え尽きる。広葉樹はもつ。しいたけ栽培:
シイタケのほだ木にする場合は、幹を90cmで玉切りして乾燥させる。この際、うかつに切りかけたりして傷をつけないこと。雑菌が入りやすくなる。雑菌はしいたけ菌よりも強い。
カシ、栗などの間伐材(1m程度の玉切り)にドリルで30箇所/1本の穴をあけ、菌のコマを金槌で叩いて入れる(コマは30x本数用意)
丸太は、湿ったところに地面に水平に交互に積み重ねて置く。秋に斜めに立てる
2年後から収穫里山に咲く彼岸花
杉桧林:枝打ち
枝打ちは冬の作業。夏にやると幹と皮の間に水がたまっているため皮がむける。間伐は秋から(材にする場合は春から夏)、植林は春、夏は大刈り(下草刈)。
杉は枝を落としながら成長する。桧は枝を落とさない。両者とも、できれば17〜8年までに枝打ちしておく(本当の枝打ちは、もっと若い木に対して行う)。
枝打ちをしないと円錐形の幹に育つ。
桧は25年までに枝打ちすれば間に合う。30年以上たったものは、枝打ちしても(しないよりましだが)そのコストに見合った価格では売れない。
杉は自然に枝を落とすが節になるため、やはり枝打ちが必要。節のある木は安いが、今は節をふさぐ技術が評価されない。注:一方、枝打ちは傷が残る、見た目のみ、今は節を埋める技術があるから不要、という意見もある。
また技術のないボランティアが枝打ちをすると幹に傷をつけ、そこから雑菌が入るなどかえって
木が傷むという話もある。本当の枝打ちは、良い材にするために若い木に対して行うもので、緑の枝を落とす。この枝打ちをやれるところは(東京西部では)もうほとんどない。新たに植林している森がないためだ。
今やっている枝打ちは、若い頃枝打ちしそびれた大きな木に対するものが多い。杉の場合は枯れ枝を落としている。枝打ちは6メートルの梯子を使った8メートルまで。4メートルの柱が2本とれる。材は一玉4メートルか6メートル。それ以上は普通は使わないので不要。
梯子を使う場合は、下のゴミをのけてフォークの部分を挿す。必ず山側に、できるだけ垂直になるように立てる。角度は80度まで。
下と途中を縄でしばり、頂上を鎖で留めて固定させる。安全帯は腰で締める。ウエストで締めたため、落ちたときに内臓を圧迫して死亡した例がある。女性はウエストになりやすいので注意。また女性はなぜか、落ちたときに頭が下になりやすい。ウエストだけでなく、股下も通すタイプのほうが安全。
昇降器は最近使うようになった。プロ意識の強い人は梯子のほうが速いと梯子を好むが、初心者や女性は昇降器のほうが安全だと思う。
枝打ち用の剪定鋸はアサリがない。切り口がきれいになるためだ。
枝打ちの方法
枝打ちの方法は、結構人によって異なる。いくつか記す。
1.杉には枝座がある。枝座の少し上で切ると切り口が円になる。これが正しいきり方。
枝座まで切ると切り口が楕円になる。ウイルスが入りやすくなり切り過ぎ。2.桧は枝が強く、足をかけられる。2m梯子をかけてさらに2m木登りして6mの枝打ちをする。
桧の枝を枝座の上で斜めに切ったあと、材を良くするために枝座のふくらみごとまっすぐ切り落とす。切り口は5円玉のようになる。
最初枝を切り落とすときに、枝を抜く感じにしないこと。抜くと節の穴があいてしまう。
慣れた人は鉈でいきなり枝座ごとまっすぐ切ることができる。3.杉も枝座ごととる。とらないと、杉の場合はまた芽が出てくる。こぶや切り残しは残さない。えぐれるぐらいでよい。木が巻き込んで治す。
4.桧は枯れ枝は鋸で台座から切り落とし、生きている枝は鉈で落とす。
片足を梯子やステップ、枝に乗せ踵で木を押さえ、もう片足を木に巻きつけ脹脛と踵で押さえ木をはさむ感じにすると、体をそらして、両手で鋸を使える。長時間作業する場合は、この姿勢を保てるようにしないと疲れる。
注意:
梯子をかけるとき、枯れ木でないか、上のほうが飛んでいないか確認する。枯れ木や飛んでいると、中が腐って倒れるため危険。
梯子の頂上を鎖で留めている場合は、降りるときに外すことを忘れない。忘れるとまた登り直すことになる。
鉈を使う場合、利き手でない手は上方に置くようにする。振り下ろした鉈で怪我をしないため。
木の裏側の枝を打ち忘れることが多いので、必ず裏に手を回して確認する。