栽培方法(実際の体験 & 各地の取材内容) 雑穀栽培法(茨城編)
1996年から2013年までの月別の作業内容 月次作業一覧表
1996年から2010年までの詳しい栽培日誌 作業日誌(1996-2010)
2011年から2016年までの雑穀栽培記 2013年のスズメとの攻防と、それ以降の防鳥対策について書いています 東京編
2016/8 防鳥対策について新たに記入
このページは『鯉渕クラブ』に掲載した内容の再録です。
注記:左のリンクにある「雑穀栽培カレンダー」は、岩手県軽米町のものです。関東で実際に栽培した記録は「月次作業一覧表」になります(特に収穫時期が異なり、関東では稗、黍が8月末から9月はじめ、粟が9月末か10月初め)。
最近、雑穀栽培に興味のある人/自治体が増えているようで、当サイトにも種の入手方法などの問い合わせが来るようになりました。
専門書でよい本を見つけましたので、参考にされるとよいと思います。本の紹介はこのページの下と追記に掲載しています。(2007/10)
『鯉渕クラブ7号』
うずしきようこ
雑穀栽培記を web 上に掲載したところ、栽培方法についての問い合わせを何件かいただきました。それで今回は臨時編として、雑穀の調整方法について書こうと思います。
雑穀の栽培はそれほど大変ではない。基本的に荒れ地でもよく育ち、播種後の間引きと中耕培土(土寄せ)さえきちんと行えば、かなり丈が伸びるので雑草も生えなくなる。土寄せ後は刈り取りまで特に何もしなくてもよいくらいだ。
西日本にお住まいの方からは、粟の防虫対策を聞かれたが、これまで群馬、栃木、茨城の南北2カ所で栽培してきて、虫の被害にあったことはない。多少茎に入ることはあるようだが、関東で大発生することはないのではないかと思う。その方の話では、西日本では各県もちまわりで新嘗祭に献上する粟を栽培しているそうだ。神主が来てお払いしたり儀式があり、栽培の当番にあたった農家は結構大変らしいが、献上用穀物の栽培方法はマニュアル化されているのでそのとおりに行えば大体うまくゆく、ただアワノメイガが発生して大変で、農薬漬けでないと作れないとの話だった(就農記3)。ちなみに青森県に行ったときには、青森では天皇へ献上する稗を作っていると聞いた。
一番質問の多いのが、調整方法である。これは私も聞きたいくらいで、雑穀は刈り取った後調整するのが大変だ。現在雑穀を調整できる施設、業者がとても少ない。
雑穀は刈りとった後、よく乾燥させてから脱穀する。今栽培している稗と黍は脱粒しやすいので、刈って一週間、場合によってはその場でくるり棒で叩いて脱穀している。粟と高黍(もろこし)は逆に脱粒しにくく、1ヶ月くらい干してからくるり棒で叩いて脱穀する。群馬では足踏脱穀機を使用していたが、この脱穀機を使用している方からなかなか落ちないという質問をいただいた。この場合も、よく乾燥させることが大事である。
農業経験に乏しいと、乾燥は2、3日干せばいいと考えがちだが、その程度では乾燥が足りず調整所で調整できない。天気の良い日に筵に広げて干し、夜は必ず缶にしまい、また晴れた日に筵に広げることを繰り返す。完全に乾燥したら袋に詰めて保存する。これで虫が着くこともなく、稗など100年保つという。栃木で聞いた話だが、かつて飢饉に備えた村の「お助け倉」にも、粟だの2年分の穀類が貯蔵されていた。
雑穀は米と違い、調整できるところが非常に少ない。それで栽培している人は、大抵最後の調整処理に困っている。量が少ない場合は瓶に入れて棒で突いたり、穀類の上で棒を転がして精白しているようだ。粟や黍はすりあわせ式の精米機に何度かかけると精白できるが、高黍や稗はできない。量が多く近くに精白業者のいない人は、業者に宅急便で送って精白してもらうことが多い。
雑穀食を奨めているグループを見つけ、集まりに参加したことがある。彼らも最後の調整がネックだと言っていた。そして現在ある精米機メーカーと10万円代で精白機を作れないか研究していると言っていた。いま雑穀の精白を請け負ってくれている業者も年輩者が多く、いつまで続くかわからない状況でもあるらしい。
会員ではなく特に宣伝という訳ではないが、栽培方法や業者の情報を得たい方は、ライフシード・ネットワークが元岩手県農業試験場場長の人と共同で本を出しているので、ご参考までに紹介する。
「雑穀 作り方・生かし方」創生社 ライフシード・ネットワーク編
なお、干し方にせよくるり棒の使い方にせよ、農業経験に乏しいと、気付かないまま結果的に効率を下げていることがありがちと思うので、最初は新規就農コースに出たり農家の人と話すなどして、情報を集めて埋め合わたほうがよいように思う。
終り
追記:2007年に出版された雑穀関連の本でよい本をみつけました。
「雑穀を旅する」吉川弘文館 増田昭子著(歴史文化ライブラリー233)
全国各地での伝統的な雑穀栽培/食べ方についてフィールドワークに基づく記録から、岩手県農業研究センター、岩手大学農学部、東京学芸大学による在来種の種保存の取り組み、ベストアメニティ/三井物産戦略研究所のかかわる日本雑穀協会に関する記述まで、全体像を網羅している。
出版社は専門書の多い、いわゆる”硬い”出版社だが、この本は読みやすい。
雑穀の詳しい栽培方法 雑穀栽培:茨城編
岩手県軽米町で聞いた栽培方法
端神2000