2.北京で宝塚
今回の旅行の目的の一つは、北京で行われる宝塚公演を見ることだった。観劇ツアーよりも自由時間のある個人旅行で行きたかったので、チケット販売がどうなっているか劇団に問い合わせたところ、今回の公演は中国政府の招待で中国側が取り仕切っているため、チケットがどのように販売されるのかわからない、との話。阪急旅行社の行う観劇ツアーが、日本からチケットを入手できる唯一の方法のようである。現地購入も考えたが北京まで行って買えないのも悲しいので、しばらくしてからもう一度劇団に尋ねたところ、日本でチケットを扱う事務所の情報が入った、と連絡先を教えてくれた。さっそく問い合わせたところ、取扱いチケットのランクは800元と500元のみ、ツアー参加でなくチケット購入だけの場合は、料金を支払うと引換券が渡され、現地事務所でチケットに交換する方式。日程がぎりぎりで北京の街で迷っている暇はないため、さっそく北京生活地図册を買ってきて事務所の場所、劇場の位置、そのためのバスルートを確認する。
当日引換えもスムーズにゆき、中日青少年センターにある世紀劇院へ。センターに入るとダフ屋がいてチケット買うよ、チケット持ってる?とお札をぴらぴらさせる。チケット売場から出てきた(買えなかった)女の子に「あ、シャオジエ、券あるよ」、日本人かもしれないのに中国語でまくしたてる。市内観光をして開演ぎりぎりに着いたためそのまま駆け込んでしまったが、ふといくらで買うつもりか聞いてみるのも面白いかも、と気がつく。しかし休憩時間に外に出た時には、もうダフ屋はいなかった。
ぎりぎりに入ったので、場内に入ったとたんに照明が落ち、ウォーと歓声と拍手が起こった。普段の宝塚公演と異なる雰囲気になんだなんだ、と驚くうちショーが始まった。前半は日本物で、途中マイクが使えなくなるハプニングはあったが、まあまあの出来で終了。休憩時間に劇場のチケット売場へ行ってみる。係員は「宝塚公演は全席売り切れ」、値段は下は60元から120、200、280、380、そのあといきなり500、800、とパンフを見せつつ言った。日本で販売されたランクや旅行社の扱うチケットから考えても、500元と800元は日本人用、380元以下が中国人用という気がした。500元の席は1階の前方と後方を1対2で分ける通路の前方部分。500元や800元の値段については、中国人感覚では高いが、このあと行われるイタリアオペラ公演も最高800元だったので海外公演ではこのくらいするようだ(おそらくこれも在住外国人向け値段か)。客席に戻り1階2階を歩いてみる。1階後方でたまに日本人の女の子連れがいたが、大多数は中国語をしゃべっていた。背の高い女の子達、子供連れ、カップル、おじさんと女性数人連れ、よくわかんない男達も多かった。宝塚の海外公演は通常半分以上が日本人団体客と聞いたことがあるが、北京公演に関しては7割は確実に中国人のようだ。
場内の様子(世紀劇院)
女子トイレに行くと、女の子たちがいて一人はニコンの一眼レフをかかえている。初め日本人かと思ったが「照得zenme様?」「好照得許多」(「うまく撮れた?」「いい写真が一杯撮れた」)とはしゃいでいる。その後彼女たちはカメラ片手に通路に立ってしゃべっているところを係に注意され、鞄に仕舞わされていた。確かに公演中さかんにフラッシュが焚かれていた。日本の公演ではすぐに係が飛んでくるがここはそうでもない。後方席から焚かれることも多く、思わずこの場に乗じて撮っちゃおうかと思うが、回りは撮っていなかったのでやめた。
後半は現代物、ベルバラ調ありラテンありラインダンスありでこちらのほうが面白かった。初めて宝塚を見たという日本人駐在員が「思ったよりいいね」と言う。最後も拍手と歓声と口笛で異様な盛り上がり、例の大階段を降り全員並んで幕を閉じる場面では後方の中国人たちも立ち上がって手を振っている。宝塚劇場とはまったく違うノリ。
帰り道、中国人たちはタクシーを呼び止めたりバスに乗って帰ってゆく。私もバスに乗り国貿橋駅で地下鉄に乗り換えた。改札を通るとき、先にいかにもバレエをやっているかんじの少女が宝塚公演のパンフレットを抱えて通り過ぎ、続いて私が同じパンフレットを持って通った。それを見た改札係の女の子たちが「あ、あれリーベンの劇団」としゃべりだし一人が歌うまねをする。どうやらテレビでやったらしく、結構知っているようだった。街中のレコード店や地下鉄通路等でもポスターを見かけた。
北京の地下鉄
後日談:
中国語学習仲間で中国語の通訳翻訳の仕事をしている友人が「この前放送を聞いていたら、江沢民が宝塚公演のことしゃべっていたよ。宝塚の人たちのことをすごいほめてて、芸術家、て呼んでた。その後キーロフだかロシアのバレエ団の話も出て、その人たちのことは団員、て言ってた。普通逆じゃない?」と特に宝塚ファンでもない彼女。なぜ江沢民が?単なるヅカファンか、政治的に何かあるのか、それとも金儲けの良い例と興味を持ったか。おそらく三番目だろうが、少々気になった。
写真: 地下鉄駅の宝塚公演ポスター
宝塚とは関係ないですが:
北京の街でみかけた音楽雑誌(モダン天空)の広告。パンクは終わったかまだ始まったばかりか?とある
(街中でもパンクの格好をした青年を見かけた)
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