4.新空港派出所のお世話になった顛末
最終日、ホテルから空港へ行くときだけタクシーを利用した。高速代はこちら払い、メーター分だけ請求するシステムだった。パスポート、航空券、お金を取り出して小袋に入れ、領収書を断って降りたとたん、その袋をタクシーの中に置き忘れたことに気がついた。慌てて走り始めたタクシーを呼びとめ追いかけるが、どんどんスピードをあげて行ってしまった。うわあ、どうしよう、と一瞬足元が崩れる感じがした。そばにいた別のタクシーが、どうした、乗ってけ、というのでとりあえず乗車、さっき行ったタクシーを追っかけて、というがロータリーの分かれ道でわからなくなった。どうした、と停車して聞くのでパスポート等を置き忘れたことを言うと、車の番号は?わからない?ならもう探せない、という。他の荷物をおいてきたままだったこともあり、空港へ戻る。
空港ロビー入り口に立つお巡りさんにパスポートを置き忘れたと言うと「車号は?」わからない、「発票は?」降りるときいらないと断った、「ならだめだ。あれに番号が書いてあるんだ、探し出せないよ。とりあえず空港一階に派出所があるからそこに行きなさい」といわれた。どうしよう、今日中に日本に戻れない、下手したらパスポート再発行まで中国に足止めだ、と落ち込みながら派出所へ。
派出所は空港隅の事務所の集中したところに1部屋構えていた。応対した警察官はてきぱきと親切、「どこから乗った?崑崙飯店?じゃわかるだろう。崑崙飯店に電話しな
さい」と部下に命じ、「必ず見つけてあげるからね」、なんて頼もしいんだろう、と地獄に仏状態もあっていたく感激する。丁度警察官の出動してゆく時間帯で、みなきびきびと行動しており、刑事ものドラマを見るようだった。ここの警察官は皆優秀な感じだった。
ホテルの電話番号がわかるように、とドアマンにもらったカードを渡すと「あ、ここに車号が書いてあるじゃない」とそのユルブリンナーに似た上司はカードをパチンとはじき、部下がすぐにあちこちのタクシー会社に電話してお宅の会社にこの番号の車はいないかと尋ね始めた。「どんな車だった?シャーリーか?」だったら多分あの会社だろう、等々やっているうちに会社もわかり後は運転手からの連絡待ちとなる。時間はかかるかもしれないが、とにかく何とかなりそうだ、とほっと一息、回りの様子を見る余裕も出る。婦警さんが「彼朝食まだなのよ」と言いつつ電話係の若い警察官にカップラーメンを持ってきたり、外から戻ってきた警察官が「なんだ、台湾人か?(お世話になる人が多いのか)」と私を見て言ったりしているうちに電話が鳴り、その運転手さんからだった。会社からの連絡よりも前に忘れ物に気づき、あちこち電話してここへも掛けてきたそうだ。若い警官は「探してたんだよ。今どこにいる?近所のどこそこに派出所があるからそこへ預けて」と言う。運転手は私と話した時に10時40分の飛行機だと聞いた、だから急いで連絡した、これからすぐ空港へ持って行く、と言ったらしい。じゃあ派出所は空港のどこそこにあるから、と説明している。
2、30分ほどして運転手が袋を持ってやってきた。一応、書類に申請した内容と違いないか中をあらためた後、無事パスポートも航空券も戻ってきた。運転手さんには、電話代やここまでの高速/ガソリン代もあるのでちょっと多めにお礼を渡した。最初に応対してくれた上司の警官は一段落ついたところで外に出ていったあとだったが、若い部下があと1時間だから急ぎなさい、と送ってくれた。
最近の中国は治安が悪化しているというが、今回の旅行ではあまりそう感じなかった。短期だったのでなんとも言えないが、むしろ新空港の派出所の対応や車号のついたタクシーの領収書、ホテルでのタクシー番号の控え等、観光客が増えるよう「クリーン北京」のようなキャンペーンをやっているのではないかと思えるほどで、何か意識的に評判の悪い部分(タクシーの悪評等)に対策を講じている気がした。
派出所も町中で24時間対応、と看板を掲げているのをよく見かけた。お巡りさんに道を尋ねている人もよく見かけ、以前と比べ人々と公安との距離が縮まっている気がする。
写真: 至るところで見かける派出所
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