富士山登山

富士吉田から一合目〜五合目は  こちら    

富士吉田口2 2005.10.22記    (写真の日付機能は故障)

 この日の晩は五合目の山小屋に泊まった。ちょうど地元のグループがバーベキューを楽しんでおり、一緒に飲み食いしていたところ、夜8時頃一人でインド人青年が登ってきた。これから夜中歩いて山頂へ向かうと言う。「もう夜は寒いよ、自殺行為だ」と地元の人たち、彼にもバーベキューやほうとうを分けて談笑していると、今度は白人2人が登ってきた。
 小屋の脇には富士吉田口からの登山道が通っており、六合目でスバルラインからの道と合流する。イギリス人とスイス人で、それぞれ一人で来たところ、山道で一緒になった。

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 地元グループはクリスチャンの人たちで、英語のできる人も多く、やはり「今から登るのは大変だ」と誘ってしばらく一緒に食べたりしゃべっていると、今度はドイツ人3人連れが登ってきた。インド人もイギリス人、ドイツ人も皆、日立だの日本の会社に勤めており、土日を利用して富士山登山に来たそうだ。
 山小屋の主人の話では、夜こうして外国人が登ってくることも多いそうで、山小屋にも日本語だけでなく英語や韓国語でトイレの使い方だの宿代だのが書いて貼ってあった。
 11時頃、6人は連れ立って夜の山道を登っていった。みなヘッドランプなしで、外国人はなしで登る人が多い、と山小屋の主人。


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 翌朝、6時に小屋を出発。小屋に泊まった地元グループの人たちは、朝5時半頃、六合目まで登ってご来光を見てきたそうだ。
 五合目で泊まったのは、一合目から歩きとおしたい、というのもあったが、高山病対策でもある。富士山に登ったことのある知人から、五合目に最終バスで来て、ヘッドランプで九合目まで登り、山小屋で一休みしてご来光を待つ登り方をしたところ、中年夫婦のご主人が高山病で亡くなるのを目の当たりにした話を聞いたことがある。登っているときは奥さんのほうが体調悪そうでご主人が庇っていたが、山小屋についてしばらくすると男性の様子が急変、ヘリコプターが来たが間に合わず、奥さんは半狂乱だったという。
 五合目付近の標高は2300メートル。しばらく白樺など林の中をゆく普通の山道だが、六合目からは土と岩だけの世界になる。
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 山じまいから約一ヶ月たっていたので、登る人はほとんどいないだろう、ひょっとして一人ぼっちの世界と思っていたのが、予想に反して結構いた。
 早朝はまだ少なかったものの、登山専用の岩場を登るあたりから、山頂でご来光を拝んだ人たちとすれ違うようになった。白人が多く、全体を通じて日本人と半々か、日本人よりも彼らのほうが若干多い感じだ。夏山シーズンは山頂への道が4時間待ちの渋滞、という話も聞くので、彼らは寒さにも強いし、混雑を避けて秋登るらしい。
 降りてくるアメリカ人女性と話したところ、やはり夜登って山頂で太陽が昇るまで待った、寒かったがよかったと言っていた。

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 七、八合目あたりになると、河口湖五合目で仮眠をし早朝登り始めたらしい人たちに追いつくようになった。大阪から来たという若者二人連れや、スウェーデン女性二人連れは、高地で息が苦しいと言って休み休み登っている。一人で登る男性も多い。天気もよかったせいかスニーカーに荷物なしの軽装で、のんびりハイキングのように登っている人もいる。登山慣れした格好の早足中年男性には、何人か追い越された。

 八月末に山じまいをすると、上のほうの山小屋は営業を終了しはじめる。最近は暖かいので九月半ばあたりまで営業しているところも多いが、それでも下旬になると六合目以降は営業していない。そこでトイレが問題になる。人が少なかったので物陰で小をすませたが、今思えば、登山家の田部井さんも愛用しているという山用携帯トイレを持ち歩くとよいかもしれない。
 ゴミだらけで世界遺産に登録できなかった、という富士山だが、この秋(2005年)登ったときにはゴミはまったく見かけなかった。トイレ垂れ流しの話だった山小屋もエコトイレに変わり、汚物やトイレットペーパー類も見かけない。汚さないためにも、次回登るときには携帯トイレを持参しようと思う。

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 山小屋の集中する七、八合目を越えると、休憩所などの建物はなくなる。ひたすらジグザグの火山礫の道を登り、九合目の祠を通れば、頂上の見晴台がすぐ左真上だ。
 ずっと快晴だった青空が、頂上すぐ下まで来て急に霧に覆われはじめた。ここまで来て四方を見渡せないのは残念だが、仕方がない。
 さらに風も強まり、急に突風が吹いたりする。山小屋の人の話では、強風で人が飛ばされることもある、というので注意して登る。風のせいか、体感気温も急激に下がりかなり寒い。
 写真右上、久須志神社の狛犬の間を抜けると、富士山頂上浅間大社の石柱の建つ神社脇に出た。
 山頂は雲の中で強風が吹き荒れていた。夏山シーズンだと、強風のため九合目以上は登山禁止で登れなかった、登ってもよいが自己責任という警報が出ていた、という話をよく聞くが、シーズンからはずれているとそうした管理はない。しかしこの日の風も、シーズンなら禁止か警報では、というくらい強く、南の富士宮側から次々雲が湧いては、山頂で富士吉田側に吹き飛ばされてゆく。雲は山頂のすぐ先で消えてゆくので、数十メートル下がれば快晴の世界。
 火口に近づくが、風で飛ばされそうなので腰をかがめて近寄り、何枚か写真を撮影。お鉢めぐりもしたかったが、あきらめる。

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 山頂には結構人がおり、中国人女性からほかに降り口があるか聞かれ、須走口や富士宮口などがあるが、山頂を巡らないといけない、と言うと彼女もこの風では、とあきらめていた。
 山仲間で富士山登山に来た、という中年男性が、「最初来たときはこんな風強くなかったんですよ。それで他の仲間はお鉢巡りに行ってしまった。ちょっと心配で待っているんですけどね」と話しかけてきた。一行は須走口から登り、昨晩は太陽館に泊まったそうで、太陽館からは東京の夜景がきれいに見える、ご来光も拝めた、駿河湾から昇りすばらしかったのだそうだ。
 そうしている間も、白人男性4人連れやスウェーデン女性二人連れなどが続々と登ってくる。日本人や中国人は長袖シャツの上に山用防寒着をはおっているのに、白人は半そでシャツ1枚だったりする。

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 登りは4時間30分くらいかかったが、下りは快調。数十メートル降りれば快晴で日差しも暖かい。
 下山専用道に分かれるまで、さらに大勢登ってくる人たちとすれ違う。朝スバルラインで河口湖五合目に車かバスで来て、日帰りで登って降りる人も多いようだ。杖をつきつつ一人で登ってくるお婆さんもいる。大丈夫かと思うが、ここで会うということは岩場は越えているわけだ。
 8合目で分かれる須走りコースを何人か疾走してゆくのが見える。8合目からは岩場を避けた下山専用道があるので、単調だが淡々と降りられる。約2時間半で河口湖五合目に到着。

 一度くらい登っておこう、という気持ちで登った富士山ですが、思いのほかよかったでした。独立峰のため、普通の登山で得られる景色とは全然違います。南アルプスを縦走したこともありますが、日本で二番目に高い北岳でも、周囲の景色は山ばかりでした。富士山に登れば、周囲が足元に見渡せます。今度はぜひ、お鉢巡りをしてみたいし、富士宮口一合目からのコースや、須走コースも登ってみたいと思いました。



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