秋田内陸縦貫鉄道 奥の細道番外編で秋田県を歩いたときの記録です。 秋田県鷹巣と角館の間を結ぶ。北は阿仁川沿い、南は桧木内川沿いに走っており、阿仁マタギ駅と戸沢駅の間の峠を、長い十二段トンネルで抜けている。 内陸縦貫鉄道は、2009年の今年、全線開通20周年とのことで、いろいろイベントもあるようだ。 なんとか廃線をまぬがれようと、営業努力をしている感じは強い。秋の連休時には、若い女性の車掌さんがどの電車にも乗っていて、パンフレットを配ったり、「ご乗車ありがとうございます」とプレゼントを渡したりしていたし、運転手も車内放送で観光スポットを案内したり、鉄橋の上など景色のよいところでは観光徐行を行っていた。地元住民向けの「乗って残そう」キャンペーンも沿線各地で見かけた。 ただ、基本的に内陸縦貫鉄道沿線にはもともと住民が少ない。5万分の一の地図を見ても、十数戸平均の集落が川沿いに点在しているのみ。しかも限界集落のようなところも多い。通勤通学や買物などで鉄道をよく利用する若い層と壮年層はますます減ってゆくだろう。 残るとしたら、観光路線として残るしかないような気がする。 阿仁マタギ駅では、日帰り温泉と昼食を兼ねたパックにお爺さんお婆さんの団体が来ており、乗降客は多いようだった。こういう「行きたくなる施設」があると人は異動する。 富山の市電のように、駅に直結したところに大型ショッピングセンター兼病院兼行政事務所の入った建物があるとよいかもしれない。軽くてすぐ使いたい物は持ち帰り、重い物は配達OKとか。 休日は、鷹巣−松葉間と阿仁合−角館間が、それぞれ1000円で乗降自由(乗り放題)になる券がある。本数もそこそこ出ているので、途中で降りて歩き回るのが好きな人には便利で面白いと思う。 撮影は2009年9月22日と23日。
沿線の風景(秋田内陸縦貫鉄道) 相川−米内沢 相川駅より、小阿仁のほうへ歩きに行ってみた。 阿仁川を渡ると、山脈の北端に位置する李岱の集落に出る。李岱という地名、「平文」と書いて「からふみ」と読ませる店名など、なんとなく韓国との関係を感じなくもない。 また、このあたりは良い作りの家も多く、トタン壁の家が多かった羽州街道沿いよりも豊かな気がする。
阿仁マタギ マタギで有名な打当集落は、この駅から歩いて15分ほどのところにある。 遊々ガーデンや打当温泉、熊牧場などもあり、連休のせいか乗降客も多かった。お爺さんお婆さんたちが、日帰りで打当温泉に入り昼食を楽しみに来ていたり、地元秋田の客も多い。 打当温泉へ行く場合は、無料の送迎バスが出ている。 右写真の奥が打当集落。バスは1日に一本。
笑内 カメラの電池が切れたため、写真を撮れなかったが、この駅から坂を登り、全長575.6メートルのトンネルを抜けたところに、マタギ発祥の地と言われている根子という集落がある。歩いて15分ほどだが、トンネル内は車もそこそこ通るため歩きにくい。 トンネルを抜けると視界が開け、眼下に集落を見渡すことができる。家屋はすり鉢状の中心部に集まり、その周囲の斜面に田圃と森が広がる、なかなか見事な景色だ。 トンネルは1975年に開通、それまではアクセスしにくい辺鄙なところだったろうと想像する。8月14日に無形文化財の根子番楽が奉納される。
羽後中里−左通 桧木内川沿いの集落も歩いてみた。 黒沢の集落で、田圃に被害標札が立っているのを見かけた。原因は書いていなかった(品種はうるち、あきたこまち)。角館−田沢湖間のバスの車窓からも被害標札の立った田圃をみかけたが、ほかでは見かけていない。 1998年に東北を旅行した際には、全体に不作の年で、集落を問わずあちこちで被害標札が立っているのを見たが、今年は場所によるようだ。 今年の夏は日照が少なかった。標札はないものの、穂に黒い塊がついた稲は、八郎潟や比立内近辺でも見かけた。 こちら側は、バスは1日に3本だった。
おまけ−玉川温泉 せっかくここまで来たので、癌に効く等で有名な玉川温泉に行ってみた。やはり電池切れによりカメラが使えず、写真を載せられないのが残念だが、田沢湖駅からバスで1時間少々。 松葉駅から田沢湖までは1、2時間で歩けそうだ(実際タクシーが出ている)。さらに上桧木内駅からダム湖(宝仙湖)への道のほうが近そうだが、かなりの山道と思われることと、合流点の通りを田沢湖−玉川温泉のバスが通っているものの、この地点にバス停はなく、自由乗降区間でもないと思うので(人家は一切ない)結局バス停まではかなり歩くと思われる。 ダム湖以降は、いっさい集落のない山道で、かなり辺鄙なところにある。江戸時代はどうしていたのだろうと思ったが、かつてはマタギの人たちしか知らず、一般に入るようになったのは昭和以降、しかも戦後バスが開通してから本格的な湯治場となった、新しい温泉だった。 バスの車窓はずっと広葉樹林の中を行くので、紅葉は見事かと思われる。 高台から見渡しても、温泉地以外、四方に人工建造物の一切見えない山波の中に、温泉はあった。 温泉は酸性が強く、100%原湯の風呂は一箇所のみ、あとは50%の湯で打たせ湯、気泡湯、寝湯などいろいろある。源泉を飲むこともできるが、薄めずにいきなり飲もうとしたら、脇で箱型蒸し風呂に入っていた地元の人に「薄めないと歯がぼろぼろになりますよ」と言われた。それほど酸性が強い。入浴料は600円。 北投石の岩盤浴が有名なので、岩盤浴のほうへ行ってみる。景色はちょうど箱根の大涌谷に似ており、あちこちで湯気が立ち硫黄のにおいのする中、小屋が3棟建っていた。中には人がぎっしり横たわり、外で横になっている人もいる。そばにいる人に、中と外ではどう違うのか聞いてみると、中は風をさえぎるので暖かいが混んでいる、外は地面は熱いが上の防寒対策が必要、と言っていた。 3棟目の中が数箇所空いていたので、筵を広げて横たわる。低温やけどをしないよう、ときどき体の向きを変える必要があるとの話で、最初は下が熱くてとても40分や1時間ももたない、と思ったが、慣れてくると心地よい(ただし、かなり熱くなってくるので体の向きは定期的に変える必要はある。また、筵や上にかぶるタオルなどは貸し出していないので持参する必要がある)。 周囲の人の話を聞いた限りでは、癌などシリアスな病気で来ている人よりも、20年、30年らい来ている、という人が多いようだった。1週間ほど泊まってゆく、自炊のパックツアーもあるという。岩盤浴は朝夕やっている人もいた。 自炊部の入り口にいたお婆さんも、30年来ている、自炊が面倒で3,4年来るのをやめたら体調が悪くなったのでまた来るようになった、今は調子がよい、という。宿泊の予約を取るのは結構大変なようで、半年前の朝8時に電話をすれば取りたい日にちを取ることができる、とのこと。下の新玉川温泉のほうが観光客向けで、上は湯治場という感じのようだ。 連休で駐車場は1時間待ちというほどの大混雑、岩盤浴の小屋もいつのまにか順番待ちの人が並んで待っており、こんな辺鄙なところまで大勢人が来ていた。
奥羽本線 ローカル線ではないが、写真に撮ったのでついでに載せます。 撮影は2009年9月21日。追分駅にて
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