東 京 近 郊  の 山  尾 根 歩 き
大  菩  薩  嶺

 家の近くや新宿を通る青梅街道はなじみ深いが、この街道はかつて小菅村を通り大菩薩峠を越え、甲州へ抜けていたという。丹波山村を通る現在の車道の青梅街道は”新青梅街道”だったのだ。

 このかつての峠道を歩いてみたかったが、現在、小菅側が崩落により通行止めになっている。そこで、山梨側の裂石から峠に登り小菅は荷渡場あたりまで行ったあと、峠の南を尾根歩きすることにした。

目次: 裂石−上日川峠−大菩薩峠−大菩薩嶺−ニワタシバ
     大菩薩峠−小金沢山−牛奥ノ雁ヶ腹摺山−黒岳−ハマイバ丸−大谷ヶ丸−滝子山

     石丸峠−牛ノ寝通り−大マテイ山−松姫峠−鶴峠 松姫峠−大寺山−北峰−浅川峠
     鋸尾根−北峰−麻生山−長尾根  飯尾-小菅-丹波山-奥多摩  セイメイバン  三窪高原  飯尾-三頭山-小菅-サカリ山-大寺山

  奥多摩:西鴨沢−雲取山  雲取山−酉谷山−天目山−蕎麦粒山−棒ノ嶺
      お祭り−三条の湯−飛龍山−雲取山−白岩山−霧藻ヶ峰−三峰

  奥秩父:飛龍山−雁峠  雁坂峠−甲武信岳  国師ヶ岳−金峰山




裂石−上日川峠−大菩薩峠−大菩薩嶺−ニワタシバ

2011年7月中旬
 梅雨前のまだ暑くない時期に歩きたかったが、今年は梅雨入りが例年より十日も早く、6月初旬には既に曇り空。南尾根は富士山が見えるはずなので、晴れでないとつまらない。梅雨の晴れ間を待つうち例年より早く梅雨明けしてしまい、その後は連日35度前後の猛暑日が続く。
 暑い中歩くのはきついが、まったく知らない場所でそこそこ距離がある。途中何があるかわからないので、最初は日の長い時期に歩きたい。また8月に入ると午後は雷雨が多く尾根の草地は危なそう。暑いが今のうち行ってしまうことにした。
 有名な大菩薩嶺も登っておきたいので山小屋に1泊し、熱中症にかからぬよう、のんびり歩くことにした。

コース記録:1日目  裂石10:00−上日川峠11:55(昼)12:10−大菩薩峠13:15 13:30−大菩薩嶺14:10−(雷岩で10分休憩)−大菩薩峠14:50 ニワタシバ往復 約40分
2日目はこちら


 バス待ちしていると、地元の老人が土日は柳沢峠までバスが行くから、そこから歩いたほうが登りが少なく楽に大菩薩に着けるよ、と言う。また上日川峠まで行くバスもあるので、今はそこから登る人も多いそうだが、旧街道を歩きたかったので裂石から登ることにした。   左上:大菩薩峠登山口

 しばらく車道を行き、途中山道への分岐から樹林の中に入る。千石茶屋(閉まっていた)を越えたあたりから、いかにも旧街道の趣あり(右上、左下)。昭文社エアリアの解説によれば、急登後尾根に出たあたりから昔の峠道と重なるという。
 左下:深くえぐれた、いかにも旧道。古い街道脇の木が道を避けるように根を張るのを、よく”天狗が根っこを動かした”と伝説にあるが、人が歩くにつれ土がえぐれ、それにつれ木の根も土のある方向へ伸びた結果だろう。
 右下:道の(えぐれた)中央にまかれた砂。周囲は山土なので人為的に補修されている。はじめどうやって運んだのかと思うが、やがて斜面工事現場が現れた。そこから補修したのだろう。こうして登山道は維持されている。ただ、この先崩壊箇所があり旧道は通行禁止、上日川までの2キロは林道を行くよう指示があった。
 さかんにハルセミの鳴く中、暑いので熱中症にかからぬよう、こまめに水を飲みながらゆっくり登る。





左上:西(山梨)側をのぞむ   右上:長兵衛ロッジ(上日川峠)
下、右:下草に熊笹の茂る林や、苔の多い樹林帯が続く





左上:介山荘(大菩薩峠)1897m  尾根筋はカヤト(草原)    右上:賽ノ河原(避難小屋が見える)
 明治の初めまではここが実際の大菩薩峠だったが、遭難者が多く出て現在の峠に道が付け替えられたという(昭文社エアリアの解説)。別の解説によれば、明治11年(1878)柳沢峠が開通し、大菩薩峠は街道としての役割を終えたとある(コピーのため原典探し中)

左下:西の塩山方向を望む   右下:大菩薩嶺頂上2056.9m 峠から雷岩あたりまでカヤトだが、頂上周辺から北は樹林帯





左上:雷岩   右上:今回この蝶をあちこちで見かけた
左下:雷岩あたりから大菩薩峠を望む   右下:南に上日川ダム湖が見える。この日は残念ながら富士山は見えず


 介山荘に貼られたペナントの解説によれば、かつて毎年春秋になると荷運び人夫が雷岩に集まって賭博場を開き、たいへんな賑わいだったという。こうした、決まった日に周辺集落から人が山上や尾根に集まった話はよく耳にする。何夜講で若者が集まる話は各地にあるし、四国遍路のときも遍路道のある峠にかつては市がたち人が大勢集まった話を聞いた。



上:小菅側へ下る道  右:石畳の残る道 下:石垣もある
右:ニワタシバ 左に曲がる角地で、手前が若干広くなっている。ここが荻原(塩山)と丹波・小菅の村人の無言交易場だったという。無言交易とは、いわゆる沈黙交易のことだろうか?






左上:賽ノ河原直下あたり。ここかこの一つ前の沢が”遭難者が多く出た”という旧峠道と思われる。逆側は崖に近い急斜面、下りでカーブを曲がりきれず滑落したら、一気に落ちそう。
右上:この日は雲が多く夕日が薄い。賽ノ河原あたりの鞍部に、東から雲がぞくぞく湧いては流れていた。風の通り道らしい。



大菩薩峠−小金沢山−牛奥ノ雁ヶ腹摺山−黒岳−ハマイバ丸−大谷ヶ丸−滝子山

 大菩薩嶺の南に牛奥ノ雁ヶ腹摺山やハマイバ丸へ伸びる、快適に歩けそうな尾根がある。しかも南はすぐそばに高い山がなく、富士山付きのはず。上日川峠から1日で歩くことも可能だろう。

コース記録:1日目はこちら
2日目 大菩薩峠6:30−石丸峠6:50−小金沢山7:45−牛奥ノ雁ヶ腹摺山8:20−黒岳9:15 9:25−湯ノ沢峠10:05 10:20−大蔵高丸10:50−ハマイバ丸11:20−米背負峠11:55−大谷ヶ丸12:15 12:25−滝子山13:35−檜平14:15−林道分岐15:15−初狩駅15:50



朝日を見に外に出ると、早朝は空気が澄んでいるせいか富士山が見える!
朝焼けと月と富士山(左上)  南アルプス(右上)  朝日と左から御前山、大岳、三頭山(左下)

宿の食事はフライで品数豊富、常連客が「今日はカレーじゃないのか」と言っていたが、休日前で宿泊客が少なかったためかもしれない。部屋も山小屋というより旅館のよう。ただ混雑時は指定場所に荷物を置くなど相部屋で普通に山小屋だろう。朝食6時だったので6時半に出発。涼しいうちに距離稼いでおきたいので、苔の多い樹林帯を急ぐ(左下)。





開けたところに出ると富士山がよく見えた(右上)富士山を見ながら歩くため、わざわざ来たのだ
左下:手前のカヤトが石丸峠、右上のカヤトが狼平





左上:狼平の少し手前から牛ノ寝通りを撮ったところ。中央のなまこのようにどてっとした山塊が牛ノ寝通り。左手の沢は小菅村
右上:上日川ダム湖と南アルプス   左下:狼平

宿の人が「最近笹刈したからヤブコギせずに快調に歩けるはず」と言っていたが、確かに笹の刈られた跡があった(右下)。黒岳の先まで整備されている。





狼平から小金沢山までは岩や木の根の多い道。やせ尾根があったりアップダウンもあるが、
早朝の涼しい時間帯、樹林帯の日陰の中、快調に進む
左下:小金沢山2014.3m  なぜか山頂周辺のみ枯れ木があった





右上:牛奥ノ雁ヶ腹摺山 妙な名の山なのでどんな山かと期待したが、普通の山だった。このあたりには雁ヶ腹摺山とつく山が3ヶ所ある。
下:川胡桃沢ノ頭1940m





左上:黒岳1987.5m   右上:処理された倒木。高尾裏で森林ボランティアとして山道周辺の倒木処理をやったが、ここも登山道整備がなされている
左:丹沢でよく見かけたバイケイソウ
下:黒岳の広葉樹林は山梨の森百選、と看板にあった




黒岳の南はカヤト(草原)が広がる。良い景色だが暑い
上:東南に突き出た丘が白岩丸






黒岳の南、湯ノ沢峠周辺は草原が続く。季節によっては花畑になるらしい。この時も、名前はわからないがいろいろ花が咲いていた。
右:急な下りに差し掛かるあたりで皮のむけた木を多くみかけた。鹿にしては届きそうにもない、かなり上のほうまでむけている。





上:道は深くえぐれ巨石も多い   左下:湯ノ沢峠避難小屋     右下:湯ノ沢峠





峠の南を上ると再び草原。大谷ヶ丸周辺の草原は、植生保護のため歩道の両脇をロープで囲われている。
アズマネザサのような丈の高い笹の茂るところもある(左下)
右下:奥の山頂が大蔵高丸 ここで富士山頂上に雲がかかりはじめ、その後は晴れているのに水蒸気でガスっぽくなり、富士山も南アルプスも見えなくなってしまった





カヤトと林の中を交互に行く。基本的に峠や鞍暗がカヤト、ピークが樹林のようだ。尾根の草地化は鹿のせいばかりとも言えない気が・・・(確かに鳴き声はよく耳にするが)。鞍部は風の通り道になることも多く、酸性の霧その他の要因もありそう
このあたりからハルセミが鳴きはじめる。標高によるのだろうか?

左上:ハマイバ丸1752m  右上:東南の大月市方向を望む
歩きやすい樹林の中だが、標高が下がり時間的にも日中でかなり蒸し暑いので、ペースを落としゆっくり行く
左:天下岩  下:米背負峠





米背負峠から急登  左上:大谷ヶ丸1643.8m
このあとはひたすら樹林の中をなだらかに下る  右上:鎮西ヶ池

左下:滝子山1590.3m 大谷ヶ丸も滝子山もちょうど昼時で、何人かお弁当を広げていた
右下:初刈方向 採掘場が見える



広葉樹林の下、しばらく急な下りが続く(左)
下:檜平


下:株立ちした広葉樹。里山の尾根を行く
やがて尾根をはずれ、杉の人工林の山腹を下る。渓流に出たところに最後の水場があった。頭から水をかぶって体温を下げ、やっと一息



あとは渓流脇をひたすら下り(右上)、やがて林道に出た(左)
下:藤沢集落




hidari.gif 牛ノ寝通り奥秩父1 飛龍山唐松尾山 migi.gif


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