奥 の 細 道 7  山形編1

 奥の細道ウォークに一緒に参加していた友人達が出産や班の人とのトラブルなどで次々と辞めてしまい、大会が奥の細道コースに戻っても誰も参加しないとわかり、自分もどうしようかという感じになりました。数回大会に不参加でいるとだいぶ先に進んでしまうので、埋め合わせも難しくなります。
 秋田を歩いた後しばらく中断、その後東日本大震災が発生、とても東北を歩く気分になれません(発生した年の春は大会も中止だった)。

 さらに1年が過ぎ、やはりせっかくだから歩こうと思いたちます。大会は黒部まで進んでおり、そこから参加すると象潟や鼠ヶ関、山刀峠葡萄峠、楽しみだった親不知子不知が抜けてしまう。山形と富山を交互に歩くのも気分が出ない、やはり順番に歩いて大垣までゆきたい。それなら自分で歩けばいい、ということで、2012年、気分も新たに奥の細道歩きを個人で再開します。
 もし追いつけたら大会に参加する、最後の大垣の大会にはできるだけ出られるようがんばる、大会の”埋め合わせ”ではないので平凡な国道歩きなどはバス移動電車移動などでカットしてもよいとする、というスタンスでゆくことにしました。

 最初のうちは大会コースを参考にしていましたが、団体歩行可能なルートという制約があるので、赤倉温泉から先は自分で芭蕉の歩いた道を調べて歩くことにしました。基本的に当時の街道を参考に歩いていますが、無味乾燥な国道県道歩きが続く場合は集落内や田んぼの中を歩いたり、廃線跡を歩くなどしています。

 しばらく北岩手から青森、秋田、と番外編コースでしたが、ここからは再び芭蕉が歩いたコースをたどって大垣の結びの地をめざします。
 まず、宮城県一迫から山刀伐峠を越え、芭蕉の愛した尾花沢へと向かいます。


一迫−鳴子−赤倉温泉
  (宮城、山形県)

左:一迫の秋葉神社 ここに1800年地元の俳人らが建立した時雨塚がある
一迫には縄文時代の山王囲遺跡もある

低地に田、里山に森か牧草地の交互に現れる丘陵地帯をゆく(右下)

左下:堂の沢近くの水神社 雨乞いの神として信仰されたが、由来、祭神とも不明とある
このあたりの丘陵地帯には、河童がいそうな池があちこちにある




 「奥の細道か?」と地元の人が話しかけてきた。堂の沢付近にも旧道の陸奥上街道が国道に分断されながら左右に通っている、と教えてくれた。ただ、草刈され整備されているが「今栗駒で毎日親子熊が出ているというから、国道のがいいかもしれないな」そして、「そういえば3年くらい前に大勢歩いていたことがあったな」と言う。ウォーキング協会の奥の細道ウォークのことだろう。
 また、昨年だか夜7時頃横浜の人が道を間違えて山から出てきたことがあった、鳴子に宿とっているというので送っていったと話してくれた。



馬館から上街道に入ってみた(上)。千本松長根と呼ばれる、尾根伝いに松並木が続く道。戦前まで大木があったが、戦争末期松根油を採るため伐採された。現在の松は戦後植林されたもの。戦時中、油を採るため松並木が伐採された話は四国へんろの街道筋でも聞いた。

左下は湯殿山だの書かれた板碑
里山には、縦横に道が通っているが、道標がしっかりしているので迷うことはない(右下)





上:磯良神社(オカッパ様) 狛犬ならぬコマガッパの石像前にきゅうりが供えられていた!
由緒書きによれば:カッパの虎吉を祀ったものと言い伝えられている。虎吉は陸奥平泉の豪族藤原秀郷の馬屋に仕え大変気に入られていたが、カッパの正体がばれたため暇をもらって主家を出た。主人から十一面観音をもらい諸方を転々とし、ここを永住の地と定めた。その後、ここを通る酒売商人がお堂をつくって祀った。

左下:狼塚 塚上に愛宕塔、七庚申塔などがある  右下:天王寺一里塚 このほか街道周辺には雲南崎館跡など館跡も多い





左上:江合川周辺の田園地帯  右上:鳴子温泉 上野目から鳴子までは電車で移動
下:尿前の関(仙台領)とその前にあった石碑群






左上:尿前の関前から
出羽仙台街道中山越の旧道が出ている

右上:鳴子峡
峡谷の散策ハイキング道が鳴子温泉あたりからあるようだが、大雨による崖崩れで通行禁止の立看を見た

左:小深沢、大深沢を行く旧道もあるのだが、
時間がないので国道直進



上:中山宿から中山越の旧道に入る。地元の人の話では、二週間に一度、この旧道の草刈をして管理しているという。なお、JR中山駅には機関車が展示されていた。写真は鉄道ページのこちら
右下:甘酒地蔵   左下:街道沿いの三界萬霊碑





:封人の家
旧有路家住宅のパンフレットによれば、封人の家とは国境を守る役人の家のことで、仙台藩と庄内藩がここで国境を接していた。
この家は芭蕉が宿泊した家で、唯一現存する家屋。最上(旧小国)は馬産地だったため、入ると右手に馬屋が3つあり、中央が土間(左上)、左手に広い板敷きの間(右上)がある。

左:分水嶺
陸羽東線境田駅すぐ脇に、太平洋と日本海の分水嶺がある。標高338mと低いが、写真奥から流れ手前で二手に分かれる川に草葉を流して見ると、それぞれ右と左へ流れてゆく。
奥多摩、奥秩父にも分水嶺はあるが、それぞれ沢は尾根を分けまったく別々だ。このように一続きの流れで見られるのは他になく面白い。遠くからわざわざ見に来る人もいるという。

 封人の家の管理者と話していたら、「そういえば何年か前に大勢歩いていたな。そこの駐車場を昼食会場にできないか相談に来た。大勢いるから大変だ、て話だった。大人数で歩く場合は国交省の許可がいるだの、交通量の多い歩道の狭い国道は歩けないだの、休憩や昼食に広い場所がいるだの、あんまり芭蕉の歩いた道からはずれるわけにもいかないからルートを決めるのも大変みたいだ。あのときは確かみな赤倉温泉に泊まったんじゃなかったかな。泊まりきれないほど大勢来て、温泉宿もてんやわんやだった。それでも元は千人以上いたのが、秋田のほうを回っているうちだいぶ減って600人くらいになった、て話だ」と言う。「私も最初それで歩いていたんです。だいぶ遅れているけど、今自分で歩いているんですよ」ウォーキング協会の奥の細道ウォークで大勢歩いていたことは、地元の人の記憶に残っていることがある。
 また、ここまでは個人歩きでも大会コースを参考にしていたのだが、この話を聞いて初めて、大会の奥の細道コースは団体歩行可能なルートをとるため、実際に芭蕉が歩いたコースとは異なることがあるとわかった。そこで、これ以降は自分でコースを調べて歩くようになる。


赤倉温泉−山刀伐峠−尾花沢−大石田−猿羽根峠−新庄(山形県)



左上:山刀伐峠への道沿いに見かけた蓮田   右上:山刀伐峠 この左の旧国道との分岐地点に、歩いて登る旧道入り口がある。整備され歩きやすい。
なお、山形県内については、「おくのほそ道歩くマップ」が統一パンフレットの形で各市町村ごとに出ているので(無料)、手に入れるとこうした旧道情報がよくわかる。
左下:山道のようす。さほど距離はなく30分ほどで頂上に着く   右上:頂上の子育地蔵尊 手前が子持ち杉?



左下:標高は4,500m前後と低いが、山深い眺め。芭蕉の時代は全山ブナの森だったという。そして難所だった。
山の歩きやすさは林道整備による。標高100mの里山ですら、整備されていない藪なら歩きにくく急斜面は危険だ。高山でも登山道が立派なららくらく歩ける。
右下:根曲がり杉 雪害だろうか、根曲がり杉をあちこちで見かけた。材にならないという。奥多摩などの森林ボランティアの森にもときどきあるが、これほど多くはない。奥多摩で「上の曲がっていない部分を玉切して出荷できないのか」聞いたところ、製材所には木目ですぐわかると言われた。



山刀伐峠を越えると、大平廃集落に出る。パンフには棚田が広がるとあるが、今年は耕作放棄されていた。放棄されてまだ1,2年のようで、畦は崩れておらず雑草もまださほど生えていない。このあと、庄内平野でも虫食いのように耕作放棄された田を目にした。なんとなく胸が痛む光景だ。

左下:その後国道に復帰、市野野の棚田風景と馬頭観音   右下:関谷の番所跡





左上:正厳集落  右上:鈴木清風宅跡 芭蕉は歓待され尾花沢に十泊した
左下:養泉寺  右下:寺脇からの風景 晴れていれば月山湯殿山が見える絶景ポイント





左上:スイカ畑 尾花沢周辺はスイカの産地  右上:名木沢の小学校で見かけた土俵 奄美の小学校にも土俵があったが、山形でも相撲がさかんなのだろうか
五万分の一の地図によれば、猿羽根峠も旧道があるようだ。
左下:旧道入り口 不法投棄禁止のため通行止めだが、右脇の隙間に歩行者はOKとみた。






作業林道らしき道をゆく

右上:最上川方向を望む

峠を越えると猿羽根公園に出た
ちょうど菖蒲が満開



尾花沢−天童−立石寺(山形県)

立石寺や天童は行ったことがあるため、今回はパス。ウオークとして天童−立石寺間は古道があるようなので、折を見て歩く予定



歩行年:2012夏

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