東 京 近 郊  の 山  尾 根 歩 き
東  丹  沢

 丹沢東部の焼山や宮ヶ瀬は蛭が多いと聞き、蛭のいない冬の間に歩いておくことにした。
 焼山の尾根は雪が多そうなので、自作した輪かんじきの試し歩きも兼ねて行ってみた。蛭ヶ岳登頂の予定だったが手前で時間切れ、登頂はあきらめた。

目次: 焼山登山口−焼山−姫次−蛭ヶ岳手前−姫次−東野  宮ヶ瀬−東峰−丹沢山−戸沢  東野−蛭ヶ岳−鍋割山−大倉

丹沢主脈: 蓑毛−高取山−弘法山  大山−ヤビツ峠−塔ノ岳塔ノ岳−鍋割山−雨山−高松山
    畦ヶ丸−加入道山−大室山−犬越檜洞丸−蛭ヶ岳−丹沢山−塔ノ岳
    畦ヶ丸−菰釣山−山中湖     篭坂峠−不老山

マイナー尾根:東丹沢  エボシ山  小蓑毛  南山−仏果山  栂立尾根  大山北尾根  日向薬師北  ヨモギ尾根  七沢山宝尾根  七沢山境界尾根  棒ノ木丸  塔ノ岳西−小丸北−マルガヤ  ネクタイ尾根−諸戸尾根  ナベワラシ(ゴジラ尾根)  日高−西峰西尾根−東峰西尾根  コシバ沢  蛭ヶ岳南−市原新道−白馬尾根−棚沢ノ頭尾根  宮ヶ瀬尾根
        :西丹沢  日影山  大杉山  椿丸  シキリ尾根−屏風岩山  エビラ沢  伊勢沢ノ頭  袖平山  地蔵尾根−朝日尾根  同角山稜  ショチクボ沢ノ頭−権現山



焼山登山口−焼山−姫次−蛭ヶ岳手前−東野

2012年3月中旬
コース記録:  焼山登山口8:05−9:50焼山10:00−黍殻山避難小屋11:10−姫次12:15−12:45(昼食)13:00−蛭ヶ岳手前ピーク13:20−姫次14:30−八丁坂の頭15:00−16:00林道終点−第一登山口16:30−東野17:20



三ヶ木からバス、焼山登山口で下りる。目の前の神社に参拝して出発。左上:バス停付近  右上:林道を行く。やがて右手に蛭注意のプレートのかかる山への入り口がある。



焼山まで雪はなく快調に登る
右上:焼山頂上 かつて徳川幕府の鷹狩御用地だったため、木が茂らぬよう野焼きををしたのでこの山名がついたと解説にある。ということは中世以前は別の山名だったことになる
左下:焼山を過ぎると雪道になった 右下:道志山塊から奥多摩の山々 あちらは雪が積もっていない  





左上:避難小屋
じゃりじゃりした雪道、大勢歩いた跡があり道迷いの心配はない。
雪道は時間に余裕を見たほうがよいと聞いたが、確かに蹴りづらい。陽だまりで雪の融けたところを歩くと、急にすたすた楽に進む
アルミパイプで自作したかんじきも試す。踏み跡のないところでも調子よい。ただラッセルなどハードな環境に耐えられるかは疑問。まあ、そう厳しい山には行かないし



上:姫次から富士山がよく見える  右下:大室山・加入道山方向  姫次でこの日初めて人に会った





かんじきで遊んだこともあり、木道工の立看のある蛭ヶ岳直前のピークで13時20分になってしまう(左上)。蛭ヶ岳頂上13時半でないとバスが不安。10分で頂上は無理と判断、蛭危険地帯は踏破したしかんじきも試せたし、ここは無理せず戻ることにする。山荘(右上)も見えているが・・・



姫次そばにも青根への下り口を見たが、八丁坂の頭から下りる。先の道のほうが距離は短かいが急勾配らしい。凍結していたのでアイゼンをつけて下りた
左上:林道に出たところ 少し先のゲート脇に沢があり、アイゼンやスパッツを洗えた
右上:切捨て間伐の斜面



東野の集落 もう春、ジャガイモを植え始める時期

 ところで、明治から戦前にかけての登山記録を集めた『昔の山旅』という本がある。日本の登山黎明期の記録で、槍ヶ岳穂高白馬八ヶ岳白山その他、まだ登山道のない原始の山をふもとの村人を案内に立て荷物を運ぶ人夫を雇い岩室に夜営、食事の支度も人夫が行うなどネパールかヒマラヤ登山のような記述が多い。また山中、炭焼きに会う、道のない尾根で修験修行の若者に会うなどの記述や、芥川龍之介の槍ヶ嶽紀行(1920夏、登頂したかは不明)も興味深い。
 この中に収められた1934年出版松井幹雄著『霧の旅』の「玄倉谷から丹沢山へ」を読むと、当時の山旅はまだバスがなく、国鉄の駅から山のふもとまですべて歩いていたことがわかる。当時の山レコによれば、丹沢玄倉谷6時発、熊木沢鍋割沢を越え塔ガ岳に9時半、笹尾根縦走開始(同記録によればまだ丹沢の尾根に道がなかったこともわかる)、不動の峰にて昼食12時半出発、毘盧カ岳2時、ヒメツギ2時半、青野原字長野4時半、道志川鉄橋6時半、与瀬駅8時着となっている。つまり、蛭ヶ岳から姫次を越え、道志川の橋を渡って与瀬まで歩いていたのだ。
 こうした話は他でも見たことがあり、明治か大正時代三頭山周辺の山へ行くため、今は上野原駅から飯尾行きバスで登山口まで行くところを駅から往復歩いた記述を読んだことがある。同書でも大山(だいせん)登山の記述で、夜9時ふもとの村で夕食、さらに宿屋のある村まで歩き夜11時到着、到る処宿屋に拒絶され辛うじて下宿屋に1時近く草履をぬぐ、という記事もある。
 今バス便が減って不便になったという声をよく聞くが、便利だったのは昭和30、40年代のほんの一時期で、基本、昔はみな歩いていたのだ。過疎化の進む今、また元に戻っただけだと言うこともできる。


宮ヶ瀬−東峰−丹沢山−戸沢

2012年4月はじめ
コース記録:  三叉路8:40−御殿森ノ頭9:15−高畑山9:55−本間ノ頭(東峰)11:55−円山木ノ頭(中峰)12:25−12:50太札ノ頭(西峰)(昼)13:05−瀬戸ノ頭13:15−13:50丹沢山14:05−塔ノ岳15:15−政次郎ノ頭16:00−17:00戸沢17:10−大倉バス停18:15

バスで宮ヶ瀬の三叉路へ行く。まだ宮ヶ瀬湖ができる前、このあたりを歩いた頃は馬場(バンバ)だの集落があった。今はダム湖の底に沈んでいる。
三叉路バス停から左手へちょっといったところに、登山道入り口がある(左下)。しばらく急登が続く。



やがて尾根の南をゆくトラバース道になる(右下)。大山を左手に見つつ歩く道。左下は宮ヶ瀬湖



 このあたりに御殿森ノ頭という山がある。その南下に長者屋敷という地名があり、シュトルテ氏の『丹沢夜話』によれば、新田一族の落人、矢口信吉が娘とここに入植、開墾して財をなしたが、川に椀を落としたため存在を知られ、暴徒に襲われ殺される。娘は御殿の森まで逃げたが追い詰められ、金のかんざしで自害した、という伝説がある。



トラバースは地面が斜めだったり若干崩れ気味のところもところどころあり、雪が積もっていると滑りやすいだろう
高畑山頂上(左下)766m   宮ヶ瀬湖(右下)





岩の多い箇所(左上)もあり、結構気が抜けない。ここを過ぎると尾根の北側を行くトラバース道、高畑山から一時間くらいのところから再び急登になる。ブナの林(右上)
本間ノ頭(左下)1345m  ここから本間ノ頭含め4つのピークを上り下りする尾根道





左上:蛭ヶ岳 北斜面はまだ雪が残っている   右上:丹沢山塔ノ岳方向
鹿避け柵の続く道をゆく(左下)    右下:丹沢山頂上1567m
マイナーな道なのか、ここまで誰にも会わず。またヤビツ峠からの尾根道や蛭ヶ岳塔ノ岳間のように、尾根が禿山になっている、ということもなく森に覆われている





左上:登山道のみ雪が残る丹沢主脈の道  ここからは大勢の登山者とすれ違った
2時過ぎなので丹沢山か蛭ヶ岳に泊まるのだろう
右上:塔ノ岳 例によって鹿が平気で歩いている  残念ながら富士山は見えず
左下:蛭ヶ岳方向 南側はもう雪がない  右下:ヤビツ峠への尾根道 奥に大山





左上:厚木の町が見える   右上:政次郎ノ頭
以前ヤビツ峠を登っているとき、夕方5時頃下りてくる女性とすれ違った。「今からバスありますか」と聞くと「戸沢に下りる。そこが一番早く林道に出られるから」と言っていた。そこでエスケープルートになるのかと思い、戸沢に下りてみることにした。戸沢の林道に下る道は3箇所ほどあるようだが、最も塔ノ岳寄りの政次郎尾根を下りてみた



最初は開けた尾根道をゆくが、やがて杉桧の人工林に入りその後はずっと人工林の中を行く。しかもかなりの急斜面(写真ではわかりにくいが、右上)。



左上:戸沢のキャンプ場に下りたところ。写真中央の石積みが登山口   右上:橋を渡ると大倉バス停

夕方暗くなった場合、この道よりも大倉尾根のほうが道も広く傾斜もきつくないので、はるかに歩きやすい。大倉尾根ならヘッドランプでも安全に歩けるだろう。
しかも戸沢にはバスが来ていないので、未舗装の林道を延々大倉バス停まで歩くことになる。途中集落もないから、キャンプの季節でない限り平日は車も通らない。道としても遠回りになるし、ヤビツ峠の尾根道は木ノ又大日など登り返しもある。結局塔ノ岳から3時間かかった。前回大倉尾根を下りたときは2時間だったし、塔ノ岳から戸沢まで1時間45分、山中の時間はほぼ変わらない。彼女は戸沢に車をおいていたのかもしれない。
暗くなってから塔ノ岳より下りる場合は、すなおに大倉尾根を下りるのが一番よいと思った。



東野−蛭ヶ岳−鍋割山−大倉  カメラ忘れたため写真なし

2013年3月初旬
コース記録:東野10:35−蛭ヶ岳登山口11:30−八丁坂ノ頭12:30−(12:40昼12:55)−姫次13:10−蛭ヶ岳14:50
      蛭ヶ岳7:50−9:10丹沢山9:25−10:25塔ノ岳10:30−11:40鍋割山 昼食12:20−13:40二股13:50−大倉バス停14:50

 富士山山小屋の人から東京の夜景が一番きれいなのは蛭ヶ岳山頂だと聞き、空気が澄む冬の間に登りたいと思っていた。しかし1,2月は忙しくすでにもう3月。しかも週半ばから気温があがるとの予想、水蒸気があがり霞んでしまう、と急遽蛭ヶ岳へ登ることにした。

 夜景目的なのでコースは最短を選択、山荘の人は「まだ雪があるのでアイゼンなど冬山装備で来てください」という。昨年は初めて買ったアイゼンを使いたくちょっとした雪でもつけて歩き回ったが、アイゼンに頼らず歩けるようでなくては、と登りはアイゼンなしでゆく。
 コースについては焼山から登ったときの下りを参照、途中地蔵平あたりで下山してくる人何人かとすれ違った。蛭ヶ岳−青根を日帰り往復する人、早朝大倉尾根から登り日帰り縦走する人などなど。八丁坂ノ頭あたりから急に曇ってきた。南から霧がのぼり尾根の南は曇り、北は晴れ。夜景は大丈夫だろうか?山頂に来るとすっかり霧に包まれ、数十m先の見通しもきかない。

 山小屋の人は天気はまだわからないよと言う。夕方になると西日が差し、見通せるようになってきた。夕食をとりながら小屋番を十何年続ける苦労話に耳を傾ける。7時頃外に出てみると、空はすっかり晴れ東も遠くまで見通せ夜景が広がっていた。手前右から厚木相模原橋本八王子、右手中央に江の島横浜、その奥に房総半島。手前の灯りは星のようにふるえている。が正面奥の都心部は瞬かず、のっぺりして見える。真冬には都心部やスカイツリーなど遠くの灯りもすべて瞬いて見えるという。また、日の出前地平線に見える朝焼けの赤い帯と夜景の組み合わせもきれいだと言っていた。

 翌朝小屋の人としゃべっていて遅くなり、8時頃のんびり出発。雪はまだまだ豊富に積もっており、下りなのでアイゼンをつける。天気は快晴、富士山がきれいに見え、見晴らしの良い尾根道を気分よくさくさく行く。鬼が岩あたりで、塔ノ岳などに泊まった人とぞくぞくすれ違う。丹沢山で小休止、野外のテーブルも雪に埋もれている。岳人の山ごはん特集からヒントを得た、コンデンスミルクと雪を混ぜたシャーベット(かき氷?)を作ってみた。これが抜群においしい!雪はあっても気温はプラスで暖かいこともあるが、水分もとれるし雪山の行動食はこれで全然オッケー!な感じ。もっとも氷点下や吹雪の冬山ではそんな気にならないだろうが・・・。
 丹沢山の先から雪もシャーベット状となり、塔ノ岳周辺から南斜面はもうまったく雪はなし。塔ノ岳山頂10時半頃、天気が良いせいか、平日というのに中高年や若者カップル、山ガール二人連れなどぞくぞく登ってくる。鍋割山荘の鍋焼きうどんでお昼にしよう、と鍋割山へ向かう。ここも山頂に大勢の人、みな外で鍋かかえてうどんを食べている。注文して待っている間も続々下から登ってくる。今日は本当に人が多い。おいしくいただき、コーヒーも飲んで1時間近くのんびりする。
 12時半頃大倉へ向けて下山開始、蛭ヶ岳朝は氷点下だったのに気温はぐんぐん上がり冬山服を脱がないと暑く、一方荷物になるし大変だ。二股の川でアイゼンを洗い川原に干すとたちまち乾いた。
 ここから林道歩き、里に出た。丹沢山塊の山ふところにある高台の畑は、眼下に厚木から都心へ平野が広がり見晴らしがよい。こういう畑での作業はさぞかし気持ちよいだろうと思う。



hidari.gif 菰釣山東丹沢(マイナー尾根) migi.gif


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