秩  父  3
十文字峠

 『岳人』に連載されていた山田哲哉氏の「奥秩父 山、谷、道、そして人」を読み、一度武州秩父と信州梓山を結ぶ古い峠道だという、十文字峠越えをやってみたかった。
 またこの道は秩父困民党の農民兵士たちが捲土重来を期して信州へ向かった道でもある。困民党事件は以前から興味があり、本や映画『草の乱』などを見ていたので、実際に舞台となった秩父山村の峠道を歩いてみることにした。

 川上村で小川山バリエーション尾根歩きをした帰り、この峠道から関東に戻るルートをとった。

目次:十文字峠:毛木平−十文字峠−栃本

    武甲山:川乗山−有間山−武甲山
    和名倉山:将監峠−東西仙波山−和名倉山−秩父湖
    両神山:坂本−八丁峠−両神山−清滝−日向大谷  天理岳−日向大谷
    天覧山−多峰主山  多峯主山−久須美の峰
    正丸峠−伊豆ヶ岳−子の権現  波久礼−秩父高原




毛木平−十文字峠−栃本  2013年6月上旬

コース記録:1日目梓山11:30−12:30毛木平13:25−十文字小屋15:05
     2日目:小屋発5:35−四里観音避難小屋分岐6:30−林道7:15−8:101818ピーク8:20−9:20白泰山避難小屋9:35−林道11:10−11:45両面神社11:55−信州道旧道起点12:15−12:25栃本関所跡12:45−秩父湖13:45

 左下:梓山の先 毛木平方向を望む 奥の山並みが十文字峠のある尾根
 途中雨がポツポツきていたのだが、毛木平についたとたん激しく降りだした。そのうち小止みになりそうだったので、雨宿りを兼ねてお弁当を食べながらのんびりする。

 予想通り、雨はやみ晴れ間も出てきたので歩き出す。
 右下:毛木平の石仏群「三峯山大権現 左 江戸道 右 山道」と立て札にある





 左上:一里観音   右上:広葉樹や針葉樹の混じった林から、標高があがると針葉樹の森に
 左下:十文字小屋    右下:石楠花がさかんに咲いていた シャクナゲ目当てに十文字峠に来る人も多いようで、この日も小屋に10人ほど宿泊客がいた





早朝、苔の森を行く(左上)

右上:川又との分岐

右:シャクナゲ街道
このあと両脇はスズタケに変わる(道は明瞭)

土砂崩れ箇所もある荒れた林道をゆく(左下)



やがて整備された林道に出た(上)
栃本への道は、この広場から再び尾根に入る
この先で、十文字峠日帰り往復の単独男性とすれ違う


ヤセ尾根を行く(左)
下:道脇の里程を示す観音様(三里観音)




 バイケイソウの生える斜面で道跡が不明瞭になった。斜め上にピンクテープがあったので登ると尾根に出るが、尾根に踏み跡はあるものの先ほどまでのような明瞭な道ではない。栃本へは尾根伝いに行けば間違いはないので、とりあえず進むと岩峰が現れた。やはり道をはずしていると感じ(方向は正しいのだが、本道のほうが歩きやすいし安全なので)、右(南側)を見るが、こちらは崖でとても巻き道がつけられる感じではない。左を見下ろすがこちらにも本道らしきものは見えない。よく見ると、尾根の踏み跡は左から岩峰上へとジグザグに登ってゆく。どう見ても本道ではないが、方向をはずしているわけではないので、とりあえずピークハントの踏み跡に沿ってゆくことにした。下りだと怖そうな急斜面をジグザグに登り、再び荒れた尾根道をゆく。
 左上:このあたりは赤テープがある  右上:尾根道(このへんはきれい)

 地図で確認すると、尾根が分岐する箇所で気をつけなければならないところがある。1818ピークで尾根が北東へ直進と南東に分かれており、ここを見落とさず直進せずに南東へ曲がる必要があるのだ。ここで再び高度計大活躍(高度計は小川山バリエーションルート歩きでも大活躍だった)。高度計が1820あたりを示したところで注意すると、確かにピークがある。そこで今度はコンパスを出して下る方向を確認。確かに尾根はそのまま続くので、うっかり直進してしまいそうだが、ここは南東へ下るはず。見るとスズタケヤブの中に道がついていた。道なりに下ると、左手から回ってきた明瞭なトラバース道に合流した。ということはやはり別に本道があったわけで、どこで見落としたのだろう?ずっと尾根歩き、一度も本道と交差はなかったので、バイケイソウ斜面の左にトラバース道があったのだろう。逆(登り)だと見落とさないと思う。でもまあ、ピークハンター達のおかげで岩峰登り道もついており危険ではなかったし、読図練習にもなったし、よしとしよう。

 実はピークから直進しても、本道(巻き道)にぶつかるので大丈夫ではある。また、この後も本道が軽く巻く尾根には必ず、踏み跡がついていた(その後はピークハントせずにさくさく下りた)。なお、この1818ピークは赤沢山というらしい(5万分の1には名称はないのでネット情報から推測)。

左下:1818mピーク  右:本道は明瞭





 白泰山避難小屋(左下)の南にのぞき岩がある。見晴らしがよいのでしばし休憩。倒木を利用して作られた腰掛だのが置いてあった。目の前には奥武蔵主尾根の雁坂嶺あたりが見える(上)

 白泰山登り口を過ぎ、再びスズタケ街道が続く。やはり花が咲き、枯れている(スズタケヤブで有名な和名倉山でも同様、奥秩父全体でスズタケが枯れる時期に入っているようだ)。
 南へ下る分岐のあるところに、一帯が東大農学部の演習林であることを示す看板の立っていた。
 右下:左の和名倉山、右の雁坂峠の奥に雲取から続く主尾根(笠取山から唐松尾山あたり)が見える。南側の谷はガスで真っ白。





標高1680mあたりから、ハルセミの声が聞こえてきた。1600m−1300mあたりでハルセミの声が一番よく聞こえていた。
左上:林道に出たところ

車道を越え、再び山道に入る(右上)
標高が下がると杉桧の人工林が多い

左:奥社 この尾根は十二天尾根というらしい
下:両面神社の狛犬 狼信仰のさかんな秩父らしく、やはりオイヌサマの形をしている






左上:林道川又線に出たところ 十二天尾根の入り口だが、この山道は大雨と冬季は危険のため通行禁止とある
右上:右信州道 左山道とある石柱 大正十一年一月大滝村青年団建設とある



上下:急斜面に広がる栃本集落と畑 目の前には和名倉山が圧倒的な存在感で迫る
秩父のこうした急斜面集落は耕地と呼ばれるという





左上:右手の階段脇に信州道旧道起点とある石柱が立つ   右上:栃本集落
左下:栃本の関所 解説によれば秩父往還の通行人を調べるため、信州路と甲州路の分岐点に立つとある
 行政バスが来るまで時間があるので秩父湖まで歩く(秩父湖バス停で乗るバスは行政バスに乗っても歩いても同じなのだが、集落の様子を見たかったので)   右下:路傍の石仏

 



左上:上中尾小学校跡  板碑によれば、明治7年上中尾耕地の石水寺に分教場が開かれ、明治42年現在地に校舎が建設された。一時期253名の児童を数えたがその後25名まで減少、昭和56年3月大滝小学校に合併され歴史を閉じた。この北に、遠隔地から通う児童のための大滝村児童寄宿舎があった。解説によれば昭和12年に開設、戦後上中尾まで車道開通および製炭業の衰退による児童数減少により閉止されたとある。遠隔地や冬季豪雪地から通う小学生のための寄宿舎の話は宮崎県椎葉村や福島県昭和村で聞いたことがあるが、この大滝村の児童寄宿舎が全国最初のもので、当時ラジオ放送されたり映画化されたという。
右上:学校跡地向かいに祭られていた石 力石のようなものか?

 

 道は例のバイケイソウ斜面あたり以外(ここも見落とさない人は見落とさないのだろう)、明瞭できちんとした登山道だった。
 十文字峠からの下りでは、単独男性二人とすれ違った。平日だったが意外に登山者がいるようだ。東大演習林の先ですり違った男性が「ずいぶん早いですね」と言うので、「小屋の朝食が5時でやることないし下りてきた」と答えたが、「奥秩父 山、谷、道、そして人」によれば、往時急ぎの人は栃本から梓山まで日帰り往復していたという。
 またこの道は川上村で育てられた子馬を秩父側に連れてきたり(秩父で育てて売った)物資を運ぶ道でもあった。道は村人らの手で整備されていたという。あの岩峰への登りを馬が通ったとは思えないから、やはりよい巻き道があったのだろう。

hidari.gif 武甲山正丸峠 migi.gif


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