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後   立   山   2

日本アルプス目次:
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   南アルプス縦走:前半(野呂川−塩見−荒川)  後半(赤石岳−聖岳−茶臼岳)
       北岳−間ノ岳−農鳥岳(1993)  早川尾根
       白峰南嶺 仙丈ヶ岳(仙塩尾根) 甲斐駒ケ岳(黒戸尾根)
   中央アルプス:木曽駒 越百−安平路 空木岳−仙涯嶺



北アルプス 後立山  2013年7月下旬

猿倉−白馬(村営頂上小屋) 白馬(村営頂上小屋)−唐松岳頂上山荘 唐松岳頂上山荘−五竜山荘
五竜山荘−冷池山荘 冷池山荘−扇沢

4日目 コース記録:五竜山荘6:30−五竜岳7:30−北尾根ノ頭9:10−口ノ沢コル9:30−10:30キレット小屋10:40−鹿島槍北峰12:25−鹿島槍ガ岳12:45−布引山13:40−冷池山荘14:15

 昨日夕方にいったんやんだ雨だが、夜になると再び降り出した。朝5時、まだ結構強く降っている。今日は五竜岳のG2、G5だの八峰キレットだのがあるので、雨だとあまり歩きたくない。6時頃、だいぶ小止みになってきた。しばらく様子を見ていた人たちも次第に出発してゆく。みんな結構雨でも歩くんだ、そういえばあの山岳会の彼女も五竜に登った後、八方尾根から下り午後のバスで大阪に帰る、と早朝出て行った。その時間はまだ雨が強かったと思うが、みなよく雨の中岩場へ向かうと感心する。雨でも慎重にゆけば大丈夫なのだろうか。
 小屋に残る人も大分少なくなり、部屋の掃除が始まった。唐松山荘と異なり、居場所がないので出るしかないか、との消極的理由で6時半頃歩き出す。コースタイムの2倍かけるくらいの慎重さで岩場を通過しよう、場合によってはキレット小屋泊まりでもかまわない、明日の岩場は八峰キレットだけなのであとは土道を下ればいい、と考える。
下:6時半頃、小屋を出発する人たち このとき昨晩張られたテントはまだすべて残っていた。テント組は早立ち派か、逆にのんびり派の両極に分かれる気がする。





 雨はほぼやんだが、霧がすごい。ガイドブックにペンキ印を見落とさないように(コースを見失わないよう)とあったが、この霧で大丈夫だろうかと不安。でもあの若い女性も早朝登ったのだから、と意を決してG2だのへ向かう。行くとペンキは見えるし、岩場も登りに集中すれば案外さくさく進む。まず、鎖を使わなくても登れないかホールドを探し両手両足でくいくい登る。うまいホールドがわからず、鎖にちょっと頼ることもある。あれこれ考えなかなか楽しい。一見鎖の周囲はのっぺりして見えるところもあり、鎖の脇に登りやすいところがないか探したりもしたが、結局鎖の垂れているところに一番よいホールドがあるとわかった。
 雨は降ったりやんだりを繰り返す。普段なら斜めに足を置いても足場になるが、濡れている場合は水平に足を置いた場合しか信頼できないとわかった。思いっきり蹴って滑ると危ないので、確実に信頼できる足場の場合のみ蹴って進み、斜めだったり足を掛けられる部分が小さかったり、不安が残る場合は歩くように(蹴らずに)登ることにした。



右上:五竜岳山頂 展望まったくなし 山頂付近には先に五竜山荘を出た人たちや、キレット小屋方向から来た人たちが大勢いた
下:山頂からの下りもこんな感じ







左上:北尾根ノ頭   右上:妙に赤い石がたくさんあったので撮った



左上:口ノ沢のコル

左:こういう登りは面白い。雨でも結構大丈夫じゃん、と思い始めた頃・・・

コルを過ぎ道が尾根の西をまくあたりで、谷側へ傾斜した平たい石が3枚ほど並んでいるところがあった(ひびで3枚に見えただけかも)。雨で石は濡れており、なんかここ滑りそうだな、と思った。次の瞬間、顔面に衝撃が走った。一瞬何が起こったのかわからない。え、突き出た岩に顔をぶつけた?、でも気づくと、両手で鎖をつかみ斜め岩の上に腹ばいになっている。やっちゃったー、と混乱したまま立ち上がり、状態を確認する。手足に異常はないもよう。下唇の下が痛い。口の中に血の味が広がりはじめ、口の中を切ったようだ。滑って転んだ拍子にあごの上をぶつけたらしい。外は大丈夫だろうか。触ると血はつかない。なんか大丈夫そう。とりあえず岩から安全な土の上に移動する。
 これ、て滑落寸前だった、てことか?ガスで谷は見えないが、相当落ち込んでいる可能性もある。見えないのが幸い、谷についてはこれ以上考えないことにする。いつも”ここに鎖なんていらない”と使わなかったりする鎖だが、こういうことがある。鎖さん、ありがとう!やはり鎖は必要だ。必要な箇所を予測し整備設置してくれている人に感謝だ。



 なんか興奮したまま進んでいると、岩を回ったとたんいきなり小屋が現れた(ガスっているのでそれまで見えなかった)。あれ?キレット小屋?予想より早く着いたので戸惑う。まだ10時半、今から泊まってもなあ、と思いながら小屋に近づくと、入り口に「今日も大混雑が予想されます。寝具も足りません」云々の張り紙。そうかあ、予約してないし、とまたまた消極的な理由で八峰キレットへ進むことにする。
 雨の日の岩場も結構大丈夫と慢心した気を引き締め、再びコースタイムの2倍かけてもいいから慎重に行こうと登り始める。右上:登り斜面からキレット小屋を見下ろす



上下:八峰キレット周辺 霧のおかげで高度感なし、怖くない(苦笑) たんたんと進む



右上:有名な梯子 上の道から梯子までは距離があり、一足では足をかけられそうになかった。足場を探すが見当たらない。でもみな歩いているということは弱点あるはず、とよく見ると山側に足をおけるところがあった。ただ、ここもそうだが、他の岩場でも、足のリーチが短いと難しいのでは、と感じるところが何箇所かあった。私は体が大きいほうなのでなんとかなるが、身長の低い女性は大変だろうと思う。まあ、それなりの足場がちゃんとあるのかもしれないが。



左上:まだまだ岩場っぽところはあるが、この日は集中力が続いた。ふと他のことを考えたり慢心したりがいけない。
左下:鹿島槍北の小ピーク このあたりになると人が増えてきた





右上:鹿島槍ガ岳 すでに大勢人がいた。みな頂上でお昼を食べている。さらに20人くらいの団体が南から登ってきた。冷池からピストンしているようで、リーダーらしき人が「展望がなくて残念ですが」と言うと「炎天下の中の登りより楽でよかったわ」とおばさんたち、賑やかだ。
 この日、雨にもかかわらず、五竜から鹿島槍までの稜線で結構人とすれ違った。中高年夫婦、中高年や若者の男性単独もしくは数人連れが多い。みな雨でも歩いている。キレット小屋の北ですれ違ったある中高年夫婦は、ご主人は山慣れた感じだが、奥さんは平地でも杖ついてるんじゃないか、という感じのバランス感覚で歩いていた(ストックを使っていた)。下りの鎖場でも、あぶなっかしくはあるが鎖や岩をつかみ先に下りたご主人の指示で足場をさぐり下りている。キレット小屋の北ですれ違う、ということは八峰キレットは越えてきたわけで(エスケープルートはないし)、こういう人でも歩けるのかと思った。よくガイド登山は自分でどこを歩いているかわかっていない云々ばかにされるが、これを見ると結局登り下りするのは本人の手足、ガイドが代れるわけではないので、そう考えるとみな大したものだと思う。これだけ中高年が歩いていて、前日もこの日も滑落事故を聞かない、ということは大多数は無事歩いている、歩ける、ということになる。
 ところで、八峰キレットは狭いのですれ違いが難しい、早朝なら楽に通過できるとガイド本で読み、それでキレット小屋泊の予定をたてていた。だがこの日はキレット周辺では誰にも会わず、楽に通過することができた。やはり雨で普段よりは人が少ないのかもしれない。

下:鹿島槍ガ岳から南は、安全な土の尾根道。鹿島槍の南は登山者も多く、道も広く整備されている。





左上:布引山    右上:ハイマツの中、がんばって生えている落葉樹をちらほら見かけるようになる
左下:道端の池    右下:山荘近くに咲くコバイケイソウの白い花 独特の臭いがする





右上:山荘近くにて 尾根の東斜面 ようやく晴れてきた。明日は晴天だという。
 冷池山荘も大混雑、中高年ハイカーが大勢いる。
 夜稜線を強風が吹いたがツェルトはびくともしなかった。夜中、目が覚めると満天の星空だった。


5日目 コース記録:冷池山荘7:55−爺ヶ岳9:00−種池山荘9:30−扇沢分岐11:50−扇沢駅12:10

 冷池山荘のテント場は山荘から離れており、トイレが遠いが、景色は見事だ。朝気温が低く結露がひどかったので、ツェルトを干してからのんびり出発。
 昨晩、山荘では2畳に3人で寝たという。こういうとき、テント泊だと便利だ。
左下:東 朝日    右下:西 立山連峰





左上:南 北峰爺ヶ岳     右上:北 鹿島槍ヶ岳
左下:南西 種池山荘針ノ木峠への尾根   右下:立山連峰
 昨日おととい、晴れていればこの景色で歩けたはずなのだが・・・。

 冷池山荘から種池山荘までの尾根は、これまでとは比較にならないほど大勢のハイカーが歩いていた。圧倒的に中高年が多い。近年中高年の事故が増えているというが、登山人口比でみないと、中高年が怪我し易いのか、単に人数が多いからだけなのかわからない。
 若者はそこそこ、カップルか男二人、男単独、山ガールは案外見ない。女性連れも若い女性よりもおばさんたちが多い。また案外3,40代の夫婦もあまり見ない。仕事や生活に忙しい年代なのだろう。





左上:種池山荘への尾根
右上:鹿島槍と冷池山荘
左:爺ヶ岳北の谷
下:爺ヶ岳山頂





左上:爺ヶ岳山頂より 立山連峰   右上:種池山荘の鞍部を望む
 種池山荘前にも大勢の人がたむろっていた。
 山荘から下り樹林帯に入ると、とたんに蒸し暑くなった。この暑さの中登りはきついと思うが、まだまだぞくぞくと扇沢から登ってくる。ちょうど夏休みで、大勢来ているようだ。10時でこの暑さ、やはり長い登りは早朝片付けないと、と思う。
左下:種池山荘直下の花畑     右下:小雪渓



 さくさく降りて扇沢に到着。稜線ではほとんど人に抜かれなかったが、種池から扇沢への下りでは単独男性に3人ほど抜かれた。下りは滑りやすいし急ぎ足は怖いが、飛ぶように下りていく人もいる。よく滑らないと思う。太腿の筋肉が強い(下りの衝撃に踏ん張れる=持ち堪えられる)のだろう。
 扇沢はすりばちの底のようなところ、黒部へ向かうバスが出ており観光客も多い。高速バスの予約も無事とれたので、安心して2階のレストランで枝豆をつまみに生ビールを飲みながら、のんびりすごす。

 中高年が北アルプスをめざすわけがよくわかった。歩きやすい。高低差もさほどない(この後南アルプスを歩いたが、大変だった)。道もわかりやすく、道迷いの心配はまずない(逆に低山のほうが道迷いしやすい)。コースも今では鎖や梯子、階段、吊橋などで整備されているので、年配者でも通過できるようになっている。山小屋も大きくきれいなところが多い(ただし混む)。
 熟年登山者と話していて、彼らがかつて高校生だった頃、ワンゲル部などでXXキレットを歩いた頃の様子と、今とでは整備の状況が格段に違うのではないかと感じた。逆に整備されすぎてつまらない、と思う人もいるだろう。だからわざと整備せずに残してある区間(西穂奥穂のように)もあるのだろう。
 ある若者が、穂高に行ったらすれ違う人すれ違う人、みな韓国人だったので驚いた、と言っていたが、後立山ではそういうことはなかった。基本的に日本人ばかりだったが、たまに挨拶しても会釈だけだったり返さない人もいたので、ひょっとすると外国人(言葉ができずそうなる)だったのかもしれない。まあ、あまりすれ違う人数が多いと、挨拶も大変なのは確かだが。



hidari.gif 白馬/唐松岳扇沢烏帽子岳 migi.gif


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